ホンキス*2 nino (ページ9)

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44.へんな変換　*10/14 ページ9

「あっと、この席の会計をしてる人に一緒に払ってもらって？オレ、財布持ってないから(笑)」

「えっ？」きょとんとする店員さんに

「ほら、早く行かないとお金もらえなくなっちゃうよ？」

なんて、笑って背中を押した。
あわてて小走りになる店員さん。

かわいそうに。

「そのくらい、私出しますよ」

「ん？いいの、いいの。あの人初月給で浮かれてるから(笑)」

今日は彼女の手前、素直に払うと思うよって
いいのいいの、幸せなやつがおごるんだよって言いながら戻ってくる。

「……そこに座るんですか？」

「うん(笑)」

「スペース、余ってますけど」

「べつにいいでしょ、ここで(笑)」

いやいや。
おかしいって、これ。

テーブル挟んだ目の前は、がらんと誰もいなくって
なんでか二宮さんは、さっきと同じ
私の左側に座る。

「もうちょっと、離れてください」

肘があたってるんですよ。

目の前にはチーズケーキのプレートがつやつやのオレンジとミントの葉っぱで飾られていた。

「ん？別に、食べるのに邪魔になるわけでもないし、いいんじゃない？(笑)」

確かにフォークを持つ私の手とジョッキを持ってる二宮さんの手は
ぶつかったりはしないんだけど、さ。

それに飲むペースが速いな。
デザートと一緒に届いたジョッキに
ビールがほとんど入ってない。

「……この配置は、おかしいです」

「なんで、そんなにこだわんのよ(笑)」

「おかしいから、おかしいって…」

「あ、正面からイケメテるオレが見ていたいと？(笑)」

「ち、違いますっ！」

「ちょっとは、考えなさいよ(笑)」

空になっても手持ち無沙汰なジョッキから手を離した二宮さんの手。

二宮さんの手と腕が斜めに横切って、私のジョッキを手に取った。

躊躇なく、人のジョッキに口をつけて
「ぬるー(笑)」って。

「な、なに…ヒトのビールを飲んでるんですかっ！」

「ん？もったいないでしょ？Aちゃん、デザート食べてるからいいかなって」

もう会計しちゃったし、追加で頼むほどじゃないじゃんって。
それは、そうだけど。
そう、だけど。

間接キスなんて、また、へんな変換をしてる。
へんな変換なのに、バクバク…してきちゃったよ。