ホンキス*2 nino (ページ34)

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69.モダン焼きでっ。　*12/6 ページ34

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「入んないの？Aちゃん？(笑)」

背中に意識が集中する。
だって、こんなシチュエーション想定していなかったもん。

中にいるか、いないか。
いつもの席で、待っててくれてるか、そうじゃないか。

それしかシュミレーションしてなかった、もん。

心の戸惑いが頭の回転を鈍らせる。
頭がぜんぜん動かないから、手も足も声も
どれひとつ私の思うとおりにならない。

二宮さん。

声にしたいのにならなくて
なのに私って……

「ほら、腹へってるんデショ？(笑)」

私の戸惑いとか鈍さとか。
心とか頭とか。

全然関係ないように、私のおなかは鳴る。
自律神経だからね、私の意志に関係ないから、ねぇ？

つくづく…残念だな、私って。

ソースの誘惑にこらえ切れなくなった私のおなかは、押し寄せるソースの香りに激しさを増し
それでも動かないままの私を二宮さんが促す。

ふわんと体が動く。

何回も深呼吸して、気合を入れて
それでも動けなかったのに。

躊躇していた私の背中を押したのは
躊躇させてる張本人の二宮さん、だった。

二宮さんの手に私の背中は押されて、店の中に入る。

おばちゃんの「いらっしゃい！」は、いつもどおり。

その後の「奥、空いてるよ！」も、いつもどおり。

「ほら、歩いてよ(笑)」

店内に一歩入ったものの、まだ、スムーズに足は動かない私は
ぐいぐいと二宮さんに背中を押されてやっと、進む。

「はい、何にする？」

生ビール二つね？って、通りすがったおばちゃんにさらりと注文して
私にはメニューを差し出す。

おばちゃんが持ってきたビールを早速持って

「お疲れ」って、私のジョッキに合わす。

私もビールを一口。
やばい、凄く喉が渇いていたみたい。
冷たいものが私の真ん中を通って行って、いよいよだなって思ってしゃんとする。

「んーと、注文しちゃおうか？明太チーズもん……」

いつもどおりなら明太チーズもんじゃ。
トッピングはお餅かベビースター。

二宮さんがそこまで言ったときに
その注文をぶった切る。

「モダン焼きでっ！！！」

「くくっ(笑)声、デカっ！」

だって。
だって、だって。

店内響き渡る大声でモダン焼きを注文した私をクスクスと二宮さんは笑って見てる。