ホンキス*2 nino (ページ25)

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60.未練な五千円　*11/12 ページ25

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タクシーが扉を閉めて走り去った。

うーっ…今月最後の5千円…。
ほんのちょっぴりだけ、未練。

「ふっ(笑)いつでもいいよ？」

財布の中が見透かされてる。

厳しいけど、厳しいけれど
流されるな、私っ！

「……いえ、今日払います」

すっかすかになった財布を手早くバックにしまって
二宮さんに5千円を渡す。

って、おいっ！

ほんのちょっと財布の中身がなくなることに躊躇して
ほんのちょっと名残惜しく5千円を見つめてただけなのに

そのほんのちょっとで二宮さんは、私の前から姿を消してた。
忍者かっ！

「二宮さんっ！」

忽然と目の前からは消えたと思っていたけど
実際は私の数メートルさきの石垣のような花壇に腰をかけてた。

「聞こえてますよー。ここですよー(笑)」

腰をかけながら私に向かってひらひらと手を振る二宮さんに走り寄って
手に持ってた5千円を渡す。

「あーはい。確かにね(笑)」

そう言って5千円をしまってからから
「一本、いい？」って、胸ポケットをジャケットの上からなぞる。

「ちゃんと携帯灰皿持ってるから(笑)」

タバコとライター、それから携帯灰皿。

どこまでも用意周到な人だなぁ。

カチリとライターが火を灯して
それから二宮さんは上に向かって煙を吐いた。