愛のフルコース【伏黒恵】

夢 ページ9

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「＿＿＿さいあく」

目が覚めた途端、汗びっしょりになった身体と"あんな夢"を見てしまった自分に不快感を覚える。最低最悪。付き合ってもいない、一方的に片思いしている相手に対して、私はなんてことを。



「Aさん、五条先生から伝言が…」
「ごめんちょっと今忙しいからまた後でね！」
「は？」

恵から声を掛けられた。いつもだったら飛んで喜ぶ所だけど、今日はそんな気にもなれず早口でそう告げて颯爽とその場を立ち去る。後ろから追いかけてくるような恵の声と、そんな私を不審がる周囲の目線。

わかってる、明らかに変な態度を取った。私が恵を避けるなんて前代未聞。でも、でも…！少なくとも今日一日は後ろめたさで恵の顔を見れない。絶対に。そして、もし恵と目が合ったらきっとあの夢の内容が蘇ってきて私の頭が爆発するだろう。

「…一体どうしたんだよお前」
「真希〜」

先程の一連の流れで私の様子がおかしいことを察した真希が、少し面倒そうにそう尋ねてくれた。

「実はね、夢を見て…」
「夢？」
「その…恵と…」

怪訝そうな顔をした真希に、ごにょごにょと耳打ちをする。なんかもう、言うのも恥ずかしい。

「はァ〜〜!?!?」
「し！静かにして真希！」

言い終わった途端にデカい声を出す真希の口を咄嗟に覆った。真希に言ったの普通にミスだったかな。でも、他の誰にも相談できないし。

「おま、流石に馬鹿すぎだろ！アタマ男子高校生か!!」
「男子高校生じゃなくてもそーゆー煩悩はあるの!!」

そう。私が見た夢とは、恵と所謂そーゆーことをする夢だったのである。みんな察して。

とにかく、案の定真希は共感してくれなかった。共感されてもびっくりだけど。どうすればいいのと泣きつけば、そんなん知らねーとぶんぶん顔を横に振られた。

「そんなもん、言わなきゃ恵(向こう)はわかんねーだろ。黙っていつも通りにしてりゃいいじゃねぇか」
「それが無理だから相談してるんだよ」
「…完全に私の守備範囲外だ、パンダか棘に聞け」
「いやいやいや、こんなこと口が裂けても言えるわけないでしょ!!」

どうしよう、真希にも振られた。心配した私がアホだった、と去っていってしまう真希に一人絶望する。野薔薇に相談するか？いやダメだ、恵に近すぎる…何科の拍子にポロッと零されたら私の命はない。

「…で、結局何なんですか」
「ひッ」

突然背後に現れた恵に思わず短い声を上げた。いつの間に…てか、聞かれてなかったよねさっきの会話。とにかく逃げようとすると手首を掴まれ阻止される。あぁ、終わった。

そのまま暫く俯いて、恵の無言の圧に耐えるのだった。


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