酔っ払いの相手 ページ4
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恵いる?そう繰り返す声と、何度もノック__というよりも、殴られる扉。こんな時間にこのデカい声。流石に読書を中断しドアを開けた。
「うるせぇ、今何時だと思って__」
「今日もかっこいーねー」
目の前にいたのは、頬を火照らせ蕩けた瞳で俺を捉えるAさんだった。一瞬思考停止して、それから彼女が見せてきた缶に目を見開く。
「一緒に飲もーよ。おいしーよこれ、私3缶飲んだからあげる」
「…酒じゃねーか」
「そーだよ、でもジュースみたいなもん」
ヘラヘラと笑いながら缶を見せびらかすその人に思わず言葉を失った。何してんだこの人。飲まされた…って訳でもなさそうだし。
とにかくこの現場を見られたらまずい。勿論俺じゃなくてこの人が。咄嗟にAさんの腕を引き自室に入れた。普段だったらこう簡単に体勢を崩す人じゃないが、酒が入っているからか簡単に動かせた。そこにも不安が募る。
「マジで何してんすかあんた、未成年飲酒は立派な犯罪ですよ」
「言ったじゃん、ジュースみたいなもんだって」
何で怒るの、と口を尖らせたその人は俺の話など頭に入っていないようで。赤らんだ頬を膨らませながら視線を逸らした。一つ一つの仕草につい息が詰まった。
「めぐみ眠い、たおれそう」
「自分の部屋に戻って寝てください」
「やだやだー、せっかくきたのに」
「…酔っ払いの相手とかしたことねーよ」
普段以上にガキ臭い言葉。俺の事を呼ぶ声がやけに甘く響く。自分自身の余裕が無くなっているのを感じながらどうするべきかわからずにいると、突如彼女の身体がこちらに倒れ込んできて。咄嗟に受け止ると、そのまま擦り寄るように頬をくっつけたAさんがふふっと幸せそうな声をこぼした。
「クソ、」
背中に腕を回された瞬間、自分の中の理性が揺らぐのを感じた。落ち着け、この人は酔っ払いだ。さっさと部屋に帰らせて寝かせるべきだ。
そうわかっているのに、子供のように高い彼女の体温を手放すことができない。俺の腕の中、馬鹿みたいに安心しきった顔で眠るAさん。言葉にできないような、胸の奥が締め付けられるような想いが募っていく。この人は何も知らない。俺が今どれだけ心を乱されているのかを。
説教は明日にしようと心に決め、自分のベッドにAさんを寝かした。今日は徹夜か。先程読んでいた本を開き、一人小さく溜め息をつくのだった。
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眠民。_ねむみん。 - 伏黒君推しというわけでは無いのですが、作者様に書くお話が本当に大好きです!!無理しない程度に頑張ってください!応援してます、大好きです!! (11月4日 10時) (レス) @page16 id: 03ba19f866 (このIDを非表示/違反報告)
無名(プロフ) - ぽんかんさん» またまたコメントありがとうございます😭ほぼ現実逃避のために書いている作品なので私も生きている限り書き続けたいと思っております!伏黒くんと並べるほど好きだと言って頂けて…嬉しくてないてしまいます、これからもよろしくお願いします♡ (9月3日 0時) (レス) id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんかん(プロフ) - 本編で永遠にくっつきそうでくっつかない距離感を愛でたい趣旨のコメントをした者です!本編がどうなろうとこちらは永遠にこの世が終わるその時まで連載していたらいいなと思います!!!!応援してます大好きです!!伏黒恵と同じくらい作者さんのお話が大好きです! (9月1日 22時) (レス) @page15 id: f2701b6134 (このIDを非表示/違反報告)
無名(プロフ) - さくらさん» どちらもお読み頂けて嬉しいです💭恵くんと夢の国!ぜひ書かせて頂きます、素敵なリクエストありがとうございますт т ❤︎ (8月29日 22時) (レス) id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 本編の方もこちらの方も愛読させてもらってます!☺️あのもしネタが切れたらでいいのですが「ディズニーランドに行ってみた」って感じのんもみたいです〜恵君とディズニー行きたいだけでs((殴これからも読みます!更新頑張ってください‼️ (8月28日 23時) (レス) id: b75e9c1e96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無名 | 作成日時:2023年8月27日 19時