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Side海人
龍「海人、これ見て。」
スマホを片手に、しめがベッドから腰を浮かせる。俺が手招きをすると、ごく自然に俺のベッドに乗っかって体をねじ込んできた。
海「いや、ちょ、狭い狭い。お前、もうちょっと遠慮しろよ。」
龍「だって、呼んだの海人じゃん。え、てか海人熱くない?大丈夫?」
海「……まあ、ずっとこんな感じだから。」
最近はずっと熱が高くて、むしろ体調の悪い状態が普通みたいになっている。本当はこうして話していても少し息苦しいんだけど、俺はそれを悟られたくなくてできる限り声を張った。
海「…で?何を見せたかったの?」
龍「あ、そうだった。これなんだけど、割り勘して一緒に見ない?」
スマホに映し出されていたのは、俺たちの好きなアイドルの配信ライブの告知だった。このグループはめちゃくちゃダンスがかっこいいから、よく見ている。配信があるなんて、つくづくいい時代だ。
海「いいよ、割り勘な。」
龍「よっしゃ、じゃあチケット買っとくね。」
しめが意気揚々と自分のベッドに引き返していく。その後姿が妙に遠く感じて、俺は思わず細い手首をつかんでいた。
海「…あの、さ。それ、いつやんの?」
龍「これ?えっと…来週、かな。ちょうど1週間後。」
海「へえ…。」
龍「なに?やっぱり都合悪い?」
海「いや……俺、生きてるかなって。」
しめが、ぎょっとした目で俺を見る。俺も、自分の言葉に少しだけ戸惑っていた。
龍「……なに、言ってんの?生きてるに決まってんじゃん。」
海「そんなの、わかんねえよ。俺なんか、いつまで生きられんのか…」
ずっと思っていたような、でも今初めて考えたような言葉が口をついて出てくる。こんなことを言ってしまうのは、熱に浮かされているせいなんだろうか。
龍「………最悪。」
少しおぼつかなくなってきた意識の中で、低い声が響く。
俺の弱気に、巻き込んじゃいけない人を巻き込んでしまった。それだけは確かにわかったのに、俺にはもう「ごめん」を言う体力すら残っていなかった。
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おさと(プロフ) - ぷりんさん» ぷりん様、こんばんは!続編のリクエスト、とても嬉しいです😭詳細な内容をありがとうございます!またまた長くお待たせしてしまいますが、どうか気長にお待ちください💦 (2022年9月21日 19時) (レス) id: d73b661cf7 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →あるサラリーマンには煩いと怒鳴られ殴られる。それでも元太を助けたい一心で諦めずに声を出して喚き続ける海人に救いの手が。優しい通行人が事情に気づいてくれ、救急車を呼んでくれて元太は一命を取り留める。長くてすみませんがどうかよろしくお願いします😭 (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →急病人がいること、住所を懸命に声に出すが上手く発音できないので全く伝わらない。このままでは元太が死ぬと思った海人は紙に事情を書いて裸足のまま家を飛び出て、言葉にならない声で助けを求めて叫ぶ。訳の分からない大声を出す様子を見た通行人は皆侮蔑の目を向け (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →元太はブラック企業に勤めており、ある日過労から突然心臓発作で呻き声を上げて倒れる。様子がおかしいと気づいた海人が大声で呼びかけるが反応はない。白目を剥き土色になってく元太を見た海人は、救急車を呼ぶため人生初の電話を決意する。自分は耳が聞こえないこと (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - 遅くなりすみません!「チョコよりあまい」とってもよかったです!書いていただきありがとうございます✨今更なのですが、続編をリクエストしても良いでしょうか?社会人になった2人はルームシェアしていた。海人は相変わらず発音が上手く出来ないが懸命に暮らしていた (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月28日 16時