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海「…発作?何分から?俺見とくから、母さん仕事行っていいよ。」


そう母親に言っている間に、兄貴の様子が落ち着いてきた。ストンと眠りに落ちた兄貴を見て、母親がため息を吐く。



「…最近、発作の回数増えてきてるから。昼間も気を付けて見ててちょうだい。」


それだけ言うと、母親は腰をたたきながらゆっくりと立ち上がった。ここ最近丸まってきたような背中を玄関まで見送って、すぐに兄貴の元に戻る。




海「大丈夫?しんどかったっしょ。」


ぼんやりと目を開けた兄貴と目線を合わせるように膝をついて、保護帽の頭をなでる。柔らかいタオルで口元を拭ってやっても、毎度のことながら反応はない。




最近てんかんの発作が増えてきていることは知っていたけど、まさか朝から見ることになるとは思わなかった。今日は調子も悪そうだし、一日中そばを離れるわけにはいかなさそうだ。





俺は買ってきた牛乳を冷蔵庫にしまうと、コンビニでもらった雑誌を手に取って兄貴の近くに腰を下ろした。雑誌、と言っても、無料の求人雑誌だ。かっこよくもなんともない。



ひたすら夜勤の仕事を探して、俺は手の中の冊子をめくり続けた。



言ってしまえば、うちの家計はあまり楽な方じゃない。家族全員働かなきゃいけないけど、兄貴を1人にしておくこともできない。だから俺は夜働いて、昼は家にいる。両親とは真逆。単純な話だ。もともと夜型の俺にとっても、その方がありがたい。



でも、今の仕事は正直もうお腹いっぱいだ。そもそも女相手に酒を飲むのはたいして好きじゃないし、デートまがいの営業をする暇があったらもっと兄貴のそばにいたい。




今朝発作を起こしていた兄貴の様子を思い出すと余計に焦りを感じて、俺は夢中で雑誌の文字を目で追っていた。

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おさと(プロフ) - ぷりんさん» ぷりん様、こんばんは!続編のリクエスト、とても嬉しいです😭詳細な内容をありがとうございます!またまた長くお待たせしてしまいますが、どうか気長にお待ちください💦 (2022年9月21日 19時) (レス) id: d73b661cf7 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →あるサラリーマンには煩いと怒鳴られ殴られる。それでも元太を助けたい一心で諦めずに声を出して喚き続ける海人に救いの手が。優しい通行人が事情に気づいてくれ、救急車を呼んでくれて元太は一命を取り留める。長くてすみませんがどうかよろしくお願いします😭 (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →急病人がいること、住所を懸命に声に出すが上手く発音できないので全く伝わらない。このままでは元太が死ぬと思った海人は紙に事情を書いて裸足のまま家を飛び出て、言葉にならない声で助けを求めて叫ぶ。訳の分からない大声を出す様子を見た通行人は皆侮蔑の目を向け (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →元太はブラック企業に勤めており、ある日過労から突然心臓発作で呻き声を上げて倒れる。様子がおかしいと気づいた海人が大声で呼びかけるが反応はない。白目を剥き土色になってく元太を見た海人は、救急車を呼ぶため人生初の電話を決意する。自分は耳が聞こえないこと (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - 遅くなりすみません!「チョコよりあまい」とってもよかったです!書いていただきありがとうございます✨今更なのですが、続編をリクエストしても良いでしょうか?社会人になった2人はルームシェアしていた。海人は相変わらず発音が上手く出来ないが懸命に暮らしていた (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月28日 16時

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