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「…っうぁー!!」
大きな叫び声と床に何かが転がるような音で、目が覚める。隣で寝ていたはずの兄貴はもういなくて、布団に体温だけがほんのりと残っていた。
海「…おはよ、どうしたの?」
リビングに行くと、兄貴が大きな声を出しながら手足をバタつかせていた。兄貴の足元に転がっているプラスチックのコップを、出勤前の母親が困った顔で片付けている。
海「あー、これ牛乳が違うよ。いつものやつじゃない。」
台所にある牛乳パックを手に取ると、母親が驚いたように俺の手元を覗き込んできた。
兄貴は時々大きな声を出して周りを驚かせるけれど、実はその大声にも意味があったりする。
特に変化に敏感な兄貴は、食べ物の味が少し変わっただけで嫌な気持ちになりやすい。今朝の大声も、きっとそれが原因だ。
海「コンビニ行ってくる。たしかいつもの牛乳、売ってたはずだから。」
速攻でシャワーを浴びて適当な服を着ると、俺は小走りで家を飛び出した。母親も、もうすぐ出勤の時間だ。兄貴を1人にはできないから、俺が早く家に戻らなきゃいけない。
クソ親父、いい加減牛乳くらい正確に買って来いよ、と心の中で悪態をつきながら、コンビニで買った牛乳とフリーペーパーを袋につっこんで、俺はまた家路についた。
海「ただいまー。」
玄関のドアを開けても、返事がない。なんとなく嫌な予感がして、俺はリビングに駆け込んだ。
海「…兄貴、!」
ソファーの上で、ひっくり返る兄貴。全身がガタガタと震えていて、口からは泡がもれている。
何度も見ているはずの姿なのに、俺は持っている袋を落とさないようにするだけで精いっぱいだった。
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おさと(プロフ) - ぷりんさん» ぷりん様、こんばんは!続編のリクエスト、とても嬉しいです😭詳細な内容をありがとうございます!またまた長くお待たせしてしまいますが、どうか気長にお待ちください💦 (2022年9月21日 19時) (レス) id: d73b661cf7 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →あるサラリーマンには煩いと怒鳴られ殴られる。それでも元太を助けたい一心で諦めずに声を出して喚き続ける海人に救いの手が。優しい通行人が事情に気づいてくれ、救急車を呼んでくれて元太は一命を取り留める。長くてすみませんがどうかよろしくお願いします😭 (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →急病人がいること、住所を懸命に声に出すが上手く発音できないので全く伝わらない。このままでは元太が死ぬと思った海人は紙に事情を書いて裸足のまま家を飛び出て、言葉にならない声で助けを求めて叫ぶ。訳の分からない大声を出す様子を見た通行人は皆侮蔑の目を向け (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →元太はブラック企業に勤めており、ある日過労から突然心臓発作で呻き声を上げて倒れる。様子がおかしいと気づいた海人が大声で呼びかけるが反応はない。白目を剥き土色になってく元太を見た海人は、救急車を呼ぶため人生初の電話を決意する。自分は耳が聞こえないこと (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - 遅くなりすみません!「チョコよりあまい」とってもよかったです!書いていただきありがとうございます✨今更なのですが、続編をリクエストしても良いでしょうか?社会人になった2人はルームシェアしていた。海人は相変わらず発音が上手く出来ないが懸命に暮らしていた (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月28日 16時