・ ページ22
朝、会社に行く支度をしていると、ガタンと何かが落ちるような音が聞こえた。締めかけのネクタイをそのままに、音のしたリビングの方へ駆け出す。
閑「海斗!」
宮「っ…!」
車いすの上で、海斗の体ががくがくと震えている。足元には、昨日食べきれなくてそのまま朝ご飯にまわしたパーティーメニューの残りが、皿ごとひっくり返っていた。
閑「海斗、これ食べようとしてたの?ごめんね、ちゃんと見てなくて。」
声が届かないと分かっていても、うつろな海斗の横顔に謝らずにはいられない。すぐに部屋の時計を見た後、俺は激しく震える海斗の足元からめちゃくちゃになったご飯を遠ざけた。
けいれんの間から時々聞こえる、海斗が息を詰まらせる音。その1つ1つが、俺の胸に突き刺さる。
お母さんが亡くなってから、てんかん発作の回数は増える一方だ。しかも、発作の時間が長い。たいていは数分程度でおさまっていた発作が、最近は5分に迫るところまで続いてしまっている。
てんかんの悪化は精神的な影響が大きいでしょう、と海斗の主治医の先生に言われたとき、俺は耳をふさぐのを我慢することに必死だった。
海斗が抱える寂しさを埋めることは、苦しさを和らげることは、俺の力じゃ出来ない。その事実を改めて突き付けられるようだった。
発作が始まってから4分を少し過ぎたところで、やっと海斗の様子が落ち着いてきた。全身で悲しみを表現するように震えていた海斗の手足から、力が抜ける。
そのままストンと眠りについた幼い寝顔が、どうしてもにじんで見えた。
444人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おさと(プロフ) - ぷりんさん» ぷりん様、こんばんは!続編のリクエスト、とても嬉しいです😭詳細な内容をありがとうございます!またまた長くお待たせしてしまいますが、どうか気長にお待ちください💦 (2022年9月21日 19時) (レス) id: d73b661cf7 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →あるサラリーマンには煩いと怒鳴られ殴られる。それでも元太を助けたい一心で諦めずに声を出して喚き続ける海人に救いの手が。優しい通行人が事情に気づいてくれ、救急車を呼んでくれて元太は一命を取り留める。長くてすみませんがどうかよろしくお願いします😭 (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →急病人がいること、住所を懸命に声に出すが上手く発音できないので全く伝わらない。このままでは元太が死ぬと思った海人は紙に事情を書いて裸足のまま家を飛び出て、言葉にならない声で助けを求めて叫ぶ。訳の分からない大声を出す様子を見た通行人は皆侮蔑の目を向け (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - →元太はブラック企業に勤めており、ある日過労から突然心臓発作で呻き声を上げて倒れる。様子がおかしいと気づいた海人が大声で呼びかけるが反応はない。白目を剥き土色になってく元太を見た海人は、救急車を呼ぶため人生初の電話を決意する。自分は耳が聞こえないこと (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - 遅くなりすみません!「チョコよりあまい」とってもよかったです!書いていただきありがとうございます✨今更なのですが、続編をリクエストしても良いでしょうか?社会人になった2人はルームシェアしていた。海人は相変わらず発音が上手く出来ないが懸命に暮らしていた (2022年9月20日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おさと | 作成日時:2022年8月28日 16時