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Side龍也


休憩室で座っていると、背後の扉が静かに開く。目の前に、ペットボトルの水が置かれた。すきっ腹にコーヒーは体に悪いから、とご丁寧な説明付きで。




龍「…如恵留先生、なんでいるんですか。」

如「しめがピンチだって聞いたから。」


サラリと言って、先生は俺の正面に座った。


きっと、宮近さんが連絡したんだろう。俺がここに入院していた頃から今日まで、ずっと勤め上げてきた経験はやっぱり偉大だ。宮近さんは驚くほどに周りがよく見えていて、しかもさりげない。



そして、それは今目の前にいる人も同じだ。




如「…しめのここにあるもの、先生にも教えてくれる?」


先生の手が、優しく俺の胸をさする。いつかもらったものと同じ優しさに、出し切ったはずの涙がまたこぼれ出した。




龍「…先生。俺、無理です。数値が悪くなってるなんて、あの子にも、あの子の親御さんにだって、絶対言えません。俺が悪いんです。げんちゃんはあんなに治療を頑張ってるのに、俺が力不足だからっ…」

如「しめ、それは違うよ。」

龍「何が違うんですか?げんちゃんは、もう十分頑張ってるんです。頑張っても報われないなんて、おかしいでしょう!?」

如「それは、」

龍「わかってます。頑張れば報われるなんて、それはほぼ嘘だって、俺が一番わかってます。俺だって、長く患者だったんです。色んな子を見てきたからわかるんです。でもっ…」




そこから先は、上手く言葉にできなかった。



何もかもが嫌だった。せっかく医者になったのに、目の前にあこがれの先生がいるのに、1ミリだって理想の医者に近づけていない。


げんちゃんの病気を治してあげられない自分も、子供が病気で苦しむこと自体も。


全部が嫌で、悔しくて、許せなかった。

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おさと(プロフ) - ましろさん» ましろ様、こんばんは!なんて嬉しいお言葉…!本当に、本当にありがとうございます😭相変わらずダメダメな作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。 (2022年10月9日 18時) (レス) id: d4db3ebcdb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ - おさと様、本当に本当にありがとうございます!とってもとっても素敵です😭拙いリクをこんなにも素晴らしいお話にしていただけて感無量です...おさと様と出会えて作品を読ませていただけて幸せです...これからも作品を本当に楽しみにしています!大好きです!! (2022年10月8日 21時) (レス) @page25 id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - ぺえさん» ぺえ様、今回も素敵なリクエストをありがとうございました!いつもコメントありがとうございます。本当に励みになります😭よければぜひ、今後もお付き合いいただければ嬉しいです! (2022年10月5日 22時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)
ぺえ(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございました!!おさと様の作品ほんとに大好きなので、これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月4日 21時) (レス) @page24 id: 8c7e5fe0be (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 〇〇さん» ○○様、コメントありがとうございます!嬉しすぎて、リアルに泣いてます😭良い実習となるよう、また目標のご職業に就けるよう心から応援しております!どうかお体に気をつけて頑張ってください!! (2022年10月1日 18時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさと | 作成日時:2022年9月24日 20時

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