S.tiger【病系短編集】13

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Side龍也


俺が小児科に来てから1つ季節が変わるくらいの時間がたっても、げんちゃんの病状は一向に良くならなかった。




よくなるどころか悪化している数値の記された検査結果を見ていると、後ろの方から声がかかる。



宮「まだ帰らないんですか？」


後ろに立っていたのは、ちゃかちゃん……じゃなくて、看護師の宮近さんだった。もう少しだけ、と答えると、宮近さんは検査結果に一瞬だけ視線を向けて頷いた。



宮「お疲れ様です。」


俺も同じ言葉を返して、またデータに向き直る。宮近さんは、如恵留先生みたいに「早く帰りなさい」とうるさく言ったりしない。



今日は如恵留先生が出勤していないからもう少し残れるな、と思いながらパソコンのマウスに手をかけたとき、別の看護師が顔を出した。




「七五三掛先生、すみません。元太くんが、先生に来てほしいって…」

龍「げんちゃん？…わかりました、すぐ行きます。」


呼びに来てくれたことにお礼を言って、げんちゃんの病室に向かう。ベッドに近づくと、熱でとろんとした目が俺を映した。



龍「げんちゃん、お待たせ。大丈夫？お熱しんどいね。」

元「うん…」


体温を測ってみると、39度を超える熱だった。ハァハァと荒い呼吸をするのがかわいそうで、汗の浮かんだ額をそっとなでる。



龍「ちょっとお熱下げる薬入れるからね。」

元「うん、あり、がと…」

龍「いいえ。呼んでくれてありがとうね。」


体でも心でも、少しでもつらいと思ったら遠慮なく呼ぶように言ってある。いい子いい子、と頭をなでていったんそばを離れようとした時だった。



元「しめちゃ、まって…」

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