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Side松倉
ツンツンと元太の腿をつつくと、頭を預けていた元太の肩がピクリと動く。発作の後でどうしてもかすれてしまう声を、俺は何とか絞り出した。
倉「…ぁ、の、写真。なに、?」
元「写真?…あぁ、クローバーの。あれ、向こうで見つけて。」
倉「ちゃんと、行け、たんだ。」
元「そりゃあ、行くだろ。せっかく頑張って送り出してくれたんだから。田舎でめちゃくちゃリフレッシュしてきたよ。ありがと。」
最近度が強くなったらしい眼鏡の奥にある元太の目が、優しい色になる。
頑張って、か。寂しいのを我慢して無理やり送り出したのは、やっぱりバレバレだったのかもしれない。
元「…あの写真のやつ、意外と簡単に見つかったんだよ。」
倉「そ、なの?すげえ。」
元「公園とか人が通るとこ、探すといいらしい。夜中のよくわからんテレビでやってた。人に踏まれたりして傷つくから、葉っぱが4枚になるんだってさ。」
へえ、と返事をしながら、俺は夜中にぼんやりテレビを見ていた元太の顔を思い出していた。興味なさそうに見えて、意外と純粋に楽しんでいたのかもしれない。
幸運のなんとか、とか言うわりに、なんかありがたみに欠けるなあ、なんて思う俺とは反対に、元太はどこか嬉しそうな顔をしていた。
元「意外と泥臭いよな。ただのラッキーマンじゃねえんだ。」
つぶやく元太の眼鏡に、スマホのブルーライトが反射する。画面には、俺に送ってきたのと同じ写真が映っていた。
もう秋だからか、やっぱり枯れ気味で茶色がかった四つ葉。パッとしないなと思うけど、どこかほっとするかわいさもある。
踏まれて、潰されて、傷ついて。葉っぱが4枚になって。それが幸運の象徴になるなんて、きっとこいつも考えてなかったんじゃないか。
倉「…諦めちゃ、だめなんだろうな。」
かすれすぎて声がよく聞こえなかったのか、元太が首をかしげて俺を見る。目が合うと、顔に淡い笑みが広がった。
元「やっぱ眠そう(笑)。」
俺は意地を張るのをやめて、小さく頷いた。「おやすみ」と聞き慣れた声が、耳元で聞こえる。
離したくも離れたくもない温もりに包まれた体は、やっと穏やかな眠りに落ちいていった。
「四つ葉のクローバー」fin.
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おさと(プロフ) - ユルピさん» ユルピ様、コメントありがとうございます!素敵なリクエストをいただき、ありがとうございました!よろしければ、最後までお付き合いいただけますと幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - るるちゃさん» るるちゃ様、ご無沙汰しております!もちろん覚えております!!素敵なリクエストを、本当にありがとうございました。読み返していただいていたとのこと、本当に嬉しいです。最後までお楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともお付き合いいただければ幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - 如恵留くんのリハビリのお話見ました!とても感動的で心が暖かくなりました!この小説が最後になるのは寂しいですが、残りも頑張ってください! (2022年11月26日 20時) (レス) @page27 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 楽しみになっていました。暇な時に何回も何回も読み直し〜なども良くやっていました(笑)今後もそれを続けていきたいと思います。残りの作品を目一杯楽しみます。本当に本当にこの作品が今までにないくらい大好きです。おさとさんありがとうございました!! (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 久しぶりに見させて頂きました。覚えているかは分かりませんが何回かリクエストさせて頂いた元「kai」「海輝」という者です。久しぶりに占いツクールを見てこの作品に辿り着いたのですが終わってしまうと思うと凄く寂しいです。沢山リクエストさせて頂いて毎日の (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年11月12日 16時