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10時間以上かかった手術をなんとか終えて、松倉さんはICUに移された。
人工呼吸、血圧、尿量、体温…。いつ急変するかわからないから、24時間色んな管理が欠かせなくなる。付きっきりの看護が必要ななかで、新人の俺も指導を受けながら看護に加わることになった。
元「あ、ちゃかさん!」
面会に来た宮近さんを見て俺が声を上げると、宮近さんは照れくさそうに笑った。普段松倉さんに何て呼ばれてるか聞いてその通り呼んでみたんだけど、少し早かったかもしれない。
元「お家で、ちゃんと寝れてますか?」
宮「ばっちり……って言いたいところですけど、なかなか。」
ベッド脇の低めの椅子に座りながら、宮近さんが弱々しく笑う。
宮「クラ、どうですか?」
元「今も、安定してますよ。ケガの方の化膿もありません。」
宮「そうですか……。こいつ、昔から体が弱くて。今みたいな時期はしょっちゅう風邪ひくんですよ。だから、」
懐かしそうな顔で笑いながら、でも、宮近さんの声は震えていた。俺はその手を取って、松倉さんの手に重ねる。
元「温かいでしょ?松倉さんは、頑張ってます。今、一生懸命戦ってます。」
宮「…そうですね。俺が、弱気になっちゃいけないですね。」
元「そうですよ。だから、宮近さんもちゃんと休んでくださいね。宮近さんに何かあったら、松倉さんが泣いちゃいます。」
頷きながら、宮近さんは人工呼吸器につながれた松倉さんの顔を見つめていた。その優しい横顔に、俺は胸の奥がぎゅっとつかまれるような感覚になった。
それから、2日後。宮近さんが待ち望んでいた瞬間が、やっと来た。
元「…宮近さん!」
俺が出勤した夕方、先輩の知らせを受けてICUに入ると宮近さんが松倉さんの手を握って泣いていた。松倉さんの両目は、ちゃんと開いてる。
元「よかった…!」
帰ってきてくれた。命が、繋がった。振り返らない宮近さんの背中を見つめながら、手の甲で涙を拭う。
俺の手には、なぜかあの日の、にーにの最後の体温がよみがえっていた。
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おさと(プロフ) - ユルピさん» ユルピ様、コメントありがとうございます!素敵なリクエストをいただき、ありがとうございました!よろしければ、最後までお付き合いいただけますと幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - るるちゃさん» るるちゃ様、ご無沙汰しております!もちろん覚えております!!素敵なリクエストを、本当にありがとうございました。読み返していただいていたとのこと、本当に嬉しいです。最後までお楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともお付き合いいただければ幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - 如恵留くんのリハビリのお話見ました!とても感動的で心が暖かくなりました!この小説が最後になるのは寂しいですが、残りも頑張ってください! (2022年11月26日 20時) (レス) @page27 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 楽しみになっていました。暇な時に何回も何回も読み直し〜なども良くやっていました(笑)今後もそれを続けていきたいと思います。残りの作品を目一杯楽しみます。本当に本当にこの作品が今までにないくらい大好きです。おさとさんありがとうございました!! (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 久しぶりに見させて頂きました。覚えているかは分かりませんが何回かリクエストさせて頂いた元「kai」「海輝」という者です。久しぶりに占いツクールを見てこの作品に辿り着いたのですが終わってしまうと思うと凄く寂しいです。沢山リクエストさせて頂いて毎日の (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年11月12日 16時