・ ページ46
20代男性。意識不明。車を運転中トラックに追突され……
救急隊の説明を頭の中で繰り返しながら、俺は搬送されてきた患者さんのカバンをひっくり返した。申し訳ないなんて、思ってる暇もない。早く、この人の情報を見つけなきゃ。
松倉海斗さん。25歳。まずは、財布から出てきた免許証から情報を引き出す。それから、あとは………
元「…あ!」
見つけた瞬間、奇跡だと思った。財布に入っていたのは、うちの病院の診察券。受診歴ありだ。これなら、色んな情報が引き出せる。家族の人とも、連絡が取れるかもしれない。
俺は、勢い込んですぐにカルテを検索した。
それからしばらくして、松倉さんのご家族が来た。連絡がついたのは、宮近さんっていう名前の男性1人。続柄は、兄。到着を知らせると、うちの科で一番若い先生が説明に出てきた。
手術するのは、心臓に肝臓、それから骨折してる右大腿。大量の輸血も必要になる。全部の処置が完了するのに、半日はかかるかもしれない。
宮近さんは真っ青な顔で説明を聞いて、同意書にサインをしていた。ただでさえ忙しい状況で余裕がないのか、先生も先輩看護師もそんな宮近さんに丁寧に言葉かけをしているようには見えなかった。
1人残された宮近さんを、俺は待合室に案内した。電気をつけて、暖房の温度を設定して……
元「…外、寒かったですよね。暖房の温度、上げますね。」
俺の声に、宮近さんが顔を上げる。黒目がちな目にたっぷり涙がたまっていて、こっちを見た拍子にそれがポロっとこぼれた。
宮「……助けてください。」
元「え、」
宮「俺の、たった1人の家族なんです。なんでもしますから、お願いだから、助けてください……!」
目の前で泣き崩れる宮近さんを見て、俺は息が止まりそうになった。この姿を、俺は見たことがある。
あの時、俺はどうしたかった?震えるパパの背中に、本当は何をしてあげたかった?
元「……宮近さん。」
頼もしいことは、何も言えなかった。でも、1人じゃないっていうありったけの気持ちを込めて、俺は小柄な体を精一杯抱きしめた。
463人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おさと(プロフ) - ユルピさん» ユルピ様、コメントありがとうございます!素敵なリクエストをいただき、ありがとうございました!よろしければ、最後までお付き合いいただけますと幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - るるちゃさん» るるちゃ様、ご無沙汰しております!もちろん覚えております!!素敵なリクエストを、本当にありがとうございました。読み返していただいていたとのこと、本当に嬉しいです。最後までお楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともお付き合いいただければ幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - 如恵留くんのリハビリのお話見ました!とても感動的で心が暖かくなりました!この小説が最後になるのは寂しいですが、残りも頑張ってください! (2022年11月26日 20時) (レス) @page27 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 楽しみになっていました。暇な時に何回も何回も読み直し〜なども良くやっていました(笑)今後もそれを続けていきたいと思います。残りの作品を目一杯楽しみます。本当に本当にこの作品が今までにないくらい大好きです。おさとさんありがとうございました!! (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 久しぶりに見させて頂きました。覚えているかは分かりませんが何回かリクエストさせて頂いた元「kai」「海輝」という者です。久しぶりに占いツクールを見てこの作品に辿り着いたのですが終わってしまうと思うと凄く寂しいです。沢山リクエストさせて頂いて毎日の (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おさと | 作成日時:2022年11月12日 16時