S.tiger【病系短編集】15

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元「うわ、まじか…。」


朝(というより昼)、起きて窓を開けると外にうっすら雪が積もっていた。ここらへんで雪は珍しいから、こういう日にはきっと交通事故が増える。それは、つまり……



元「…忙しくなるな。」


二日酔いで痛む頭を押さえながら、いつもより早めに出勤の準備をする。よりによって、今日は夜勤。救急が死ぬほど忙しくなる未来しか見えない。




元「…にーに。」


家を出る直前、俺は机の上の写真に話しかけた。百均で買った写真立ての中で笑ってる男の子は、俺のお兄ちゃん。


俺はいっちょ前に酒に酔える年齢になったってのに、俺のお兄ちゃんは7歳から永遠に年を取らない。当たり前だ、もう18年も前に亡くなってしまったんだから。



車にひかれそうになった俺を、かばって。




後から聞かされた話でイメージができただけなのか、本当に覚えてるのかはわからない。でも、俺の頭にはあの日の記憶がある。車のブレーキ音と、俺を突き飛ばした力強い手を、確かに覚えてる。



「つながった命」っていうのは、そういうことだ。何年後になるかはわからないけど、俺は、にーにみたいに突然命を落としてしまう人を1人でも減らさなきゃいけない。それが、何年後になるかわからなくても。にーにのおかげで年を重ねられてる俺は、諦めちゃいけないんだ。




元「今日も、頑張るからね。にーに、見ててね。」


力をください、の意味も込めて、そっと写真立てをなでる。それから一つ息を吐いて、俺は冷え切った外の世界に踏み出した。







その日の夜は、予想通り……というより、予想以上の忙しさだった。寒さのせいで、事故だけじゃなく心筋梗塞とか脳卒中での搬送も多い。



処置室も人も足りなくなるくらい忙しくて、目が回りそうになっていた時、また新しい受け入れ要請の連絡が来た。

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