・ ページ3
Side松倉
倉「…んっ、」
なんとなく胸のあたりがざわざわして、目が覚める。今日はわりとすんなり眠れたはずなのに。
時計を見ると、まだ2時だった。床に敷いた布団には、なぜか元太の姿がない。なんだか怖くなって、俺は元太を探しに寝室を出た。
倉「…元太?」
元太は、真っ暗なリビングの床で胡坐をかいてテレビを見ていた。たいして興味があるとも思えない雑学っぽい番組をぼんやりと見ているその顔に、テレビのカラフルな光が反射する。
倉「…眠れないの?」
元「ん?…いや、ちょっと目覚めて。ごめん、起こした?」
かぶりを振りながら、俺は元太の隣に座った。一瞬、前髪の隙間からのぞく元太の目と視線が重なる。
倉「え、」
元太はゆっくり立ち上がると、俺の後ろに座りなおした。バックハグみたいな体勢になって、背中がじんわりと温かくなる。
元「調子悪くて起きてきたんでしょ?」
眠たそうだけど、やけにはっきり耳に届く声だった。俺が頷くと、後ろから回された手がゆっくり俺の胸をなでる。発作を落ち着けてくれる、いつもの仕草だ。
元「薬飲む?」
倉「…いい。こうしてると、落ち着くから。」
そっか、と元太の声が少し明るくなる。今しかないと思って、俺は元太の手に自分の手を重ねた。
倉「…何かあった?」
元「んー…、なんつーか、まあ、色々上手くいかなくて。」
倉「……そっか、」
元「でも、だいじょーぶ。海斗といるとね、元気出るから。」
倉「マジ?」
元「マジ。」
少し恥ずかしくなったのか、元太が照れたように笑う。
なんだかくすぐったくて、俺も笑ってしまった。耳にかかる息も、久しぶりに海斗って呼ばれたことも、全部がくすぐったい。
それからは、俺も元太も何も話さなかった。ただ部屋着越しに体温を交換し合うだけで、不思議と胸のざわつきは静かに落ち着いていった。
464人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おさと(プロフ) - ユルピさん» ユルピ様、コメントありがとうございます!素敵なリクエストをいただき、ありがとうございました!よろしければ、最後までお付き合いいただけますと幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - るるちゃさん» るるちゃ様、ご無沙汰しております!もちろん覚えております!!素敵なリクエストを、本当にありがとうございました。読み返していただいていたとのこと、本当に嬉しいです。最後までお楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともお付き合いいただければ幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - 如恵留くんのリハビリのお話見ました!とても感動的で心が暖かくなりました!この小説が最後になるのは寂しいですが、残りも頑張ってください! (2022年11月26日 20時) (レス) @page27 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 楽しみになっていました。暇な時に何回も何回も読み直し〜なども良くやっていました(笑)今後もそれを続けていきたいと思います。残りの作品を目一杯楽しみます。本当に本当にこの作品が今までにないくらい大好きです。おさとさんありがとうございました!! (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 久しぶりに見させて頂きました。覚えているかは分かりませんが何回かリクエストさせて頂いた元「kai」「海輝」という者です。久しぶりに占いツクールを見てこの作品に辿り着いたのですが終わってしまうと思うと凄く寂しいです。沢山リクエストさせて頂いて毎日の (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おさと | 作成日時:2022年11月12日 16時