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Side松倉
龍「…バカ、」
鼻をすすると、しめに手荒い手つきでケツを叩かれた。びっくりしたはずみで背中から落ちそうになって、慌てて両腕に力を籠める。
龍「泣くな。みんな、まちゅのこと見てる。」
ハッとして、俺は客席に顔を向けた。心配そうな視線が、俺に集まってるのが分かる。
俺に会いたくて、俺のことを大好きでいてくれてる人たち。
無意識に、口角が上がった。これは、ファンのみんなを楽しませるための絡み。そう自分に思い込ませて、俺はいたずらっぽい笑顔をつくった。
龍「…ねえ!まちゅ重いんだけど!」
マイクを通したしめの声も、いつも通り。俺はカメラに向かっておどけたピースサインをしながら、メインステージまで駆け抜けた。
しめの背中から、ステージに並べられた椅子に移る。座った状態で最後の曲を歌って、正真正銘最後の挨拶をする。
如「…じゃあ、いつものあれやりますか。」
全員の挨拶が終わって、如恵留の声を合図にみんなが立ち上がる。俺も隣にいるしめの手を頼りに、ゆっくり立ち上がった。
“いつものあれ”は、毎公演俺たちがやって来たこと。これをやるのは、今日で最後になる。俺は、みんなと同じようにマイクを椅子の上に置いて、ちゃかの「せーの」の声に合わせて息を吸った。
―いつか動かなくなる足で、たくさん踊った。いつか出なくなる声を、たくさん届けられた。いつか上がらなくなる頬を、痛いくらい上げて笑えた。思ったより短かったけど、これで俺は十分幸せだった。
あふれるほどの感謝が、次々と胸の中で渦を巻く。俺は、それを腹の底から押し出した。
『ありがとう!』
7人全員の声が重なって、会場を真っすぐに駆け抜ける。その声が溶けて消えたとき、「どういたしまして!」の声が俺たちを包んだ。
涙を流す必要はなかった。ただ、嬉しかった。最後にファンのみんなに直接「ありがとう」を伝えるっていう願いが、叶ったから。
キラキラのテープが降り注ぐ光景を目に焼き付けながら、俺は隣で俯いてるしめのケツを叩いた。
倉「…バカ、泣くな。みんなが見てる。」
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おさと(プロフ) - ユルピさん» ユルピ様、コメントありがとうございます!素敵なリクエストをいただき、ありがとうございました!よろしければ、最後までお付き合いいただけますと幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - るるちゃさん» るるちゃ様、ご無沙汰しております!もちろん覚えております!!素敵なリクエストを、本当にありがとうございました。読み返していただいていたとのこと、本当に嬉しいです。最後までお楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともお付き合いいただければ幸いです! (2022年11月27日 19時) (レス) id: 9a83433ded (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - 如恵留くんのリハビリのお話見ました!とても感動的で心が暖かくなりました!この小説が最後になるのは寂しいですが、残りも頑張ってください! (2022年11月26日 20時) (レス) @page27 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 楽しみになっていました。暇な時に何回も何回も読み直し〜なども良くやっていました(笑)今後もそれを続けていきたいと思います。残りの作品を目一杯楽しみます。本当に本当にこの作品が今までにないくらい大好きです。おさとさんありがとうございました!! (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
るるちゃ(プロフ) - 久しぶりに見させて頂きました。覚えているかは分かりませんが何回かリクエストさせて頂いた元「kai」「海輝」という者です。久しぶりに占いツクールを見てこの作品に辿り着いたのですが終わってしまうと思うと凄く寂しいです。沢山リクエストさせて頂いて毎日の (2022年11月26日 20時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年11月12日 16時