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酔いが回り、浮つく平衡感覚。
出来上がった中原幹部の肩を支えマフィアビルの通路を明け方歩む。
見えてきた中原幹部の部屋前の壁には太宰幹部が寄り掛かっていた。私は何も言わず扉前に立ち、上司の上着から鍵を取り出して開けた。
そこでやっと太宰幹部は言葉を発する。
「随分と手こずったようだね。報告では敵組織の会長まで手にしたとか。」
『…この方を運ぶの手伝ってください。』
「床に放り込んでおこう。」
雑に彼は私に貼りつく上司を引き剝がし部屋へと押し投げた。
呻く上司に申し訳なさを感じつつ鍵を掛けて、扉と床の隙間から鍵を返す。
「黙って帰すとでも思っているのかい。」
来た道を帰ろうとするが手首を掴まれ阻止される。
流れる動作で後ろから抱擁された。
酔いで判断が正確ではない事は本当だが、この時は露わになっている項へ唇の触れる感覚がしていたと思う。
酷く冷えた低い声で鼓膜に響く。
「…穢れた服に、首にある赤い痕。
私の癪に触れるのが…君は好きなんだ?」
『仕事した迄です。』
その場の温度が私の一言でさらに低下したと思う。
彼は黙ったまま強く腕を掴んで何処かへ私を連れていく。酔いに頭が回っていない私はされるがままだった。
認知したのは太宰幹部の部屋だった。
ソファへ雑に倒され、その衝撃で幾分か状況を知ることとなる。
『…お怒りですか。らしくないですね。』
聞くなり彼の冷たい目が細められ、
___ ガリ…ッ…!
肩に噛みつかれた。
ぺろりと生温い何かに触れる感覚で反射的に喉からひゅっと鳴った。
一箇所だけではない。
何度も、何度も
首、腕、耳…別の箇所へ移動していく。鋭い痛みに顔を歪ませると彼は反応を愉しみ喉を鳴らしている。
「意味理解してるだなんて、流石。」
『理解している?…__同じですね、貴方も』
淀む闇が見える目が私を映す。
首に回される、冷えた手。
「何が言いたい。」
人並なら卒倒しそうな殺気。
否、熱の混ざるものだ。
酔いは滑稽なものだ。
人の本性を暴くのだから。
喜びとは思えない微笑をする私が彼の闇に映し出された。艶のある紅の唇が言葉を紡ぐ。
『獣みたいに襲ってみなさい。
貴方の手の中には想いを寄せる相手が居ます。
でも、
貴方は自らの手で
__ 何もかも壊れていいんですか…?』
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米粉めこ - 完結おめでとうございます!とても面白くて一気読みしました! (11月29日 2時) (レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月20日 16時) (レス) @page50 id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
amane(プロフ) - 一気読みしました。とても面白かったです!完結おめでとうございます。 (2021年12月20日 1時) (レス) @page50 id: 9f53b410f9 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!読んでいてとても楽しかったです!!! (2021年12月17日 6時) (レス) id: b0014f1469 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月16日 8時) (レス) @page50 id: 813026887d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白氷 | 作成日時:2021年10月1日 22時