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#34 ページ34

__…酒の匂い。




「嫌そうに顔しかめんな。」


『酒だけは無理なんです。
飲み過ぎると吐きます。』


「其でよく務められるなこの仕事。」







首領からの命令により、
海外異能組織と繋がりのある会合への乗り込みとなった。



しかしそれは裏で行われる事だ。

表面上は酒の交遊が挟まれた舞踏会である。





相変わらず慣れないヒール。

揺れる布の感覚。
肌寒く感じる露になった肩、足、首元。

普段は薄く塗るだけの口紅は更に濃さを増し艶が意識されている。






休憩室で一時の休息を取る私と中原幹部の雰囲気は疲労で満ちていた。

たかが2時間。
まだ先が長いと思えば地獄である。





「嗚呼もう帰りてぇ。」


『女の方々の付き合いは大変ですね。』


「手前は男に群がられ過ぎだ。
もっと距離とれ喰われるぞ。」


『情報得る為なら手段は問いませんから。』







安心してくださいと言わんばかりにちらつかせる小型ナイフの刃の先を見せる。

彼は苦虫を潰した顔でそうかよと吐き捨てた。




もうひと踏ん張りだと一足先に表へ出る。







「綺麗な方だ……私と一杯どうかな?」







ホールへ入る私を見計らっていたような男が甘い言葉で話しかけてくる。


しかも運良く標的の組織幹部だ。






『えぇ、喜んで。』







妖艶に目を細め、
口許へ微笑を浮かべてやれば彼は直ぐ堕ちていく。


また一人、捕まえた。







今晩には冷たくなるであろう腰に回される手の体温が気持ち悪い。

グラスへ注がれた酒に手を伸ばす。










頭の片隅に忘れられない

彼を想いつつ夜は溶けていく。







.


.





止めろ、悪魔め消えろ。
触るな。



暗く淀んだ目でその言葉、声を受け止める。






『……さようなら。』





男は苦痛に歪んだ顔を最後に、首へナイフが刺し込まれ引き裂かれた口から多量の朱を撒き散らして途絶えた。






とんっと軽く胸を押してベッドへ屍が力無く横たわる。




__…判らない。


こんなにも近いのに。







手から伝う朱の雫を軽く弾き、染まり行くベッドから降りた。




部屋に備えられた洗面所で朱を流し洗う。

朱が染み込む揺れる服が気持ち悪い。






戻れば呼び出していた中原幹部が現場を一瞥している所であった。







「…次、行くぞ。」




『はい。』

 











暗い部屋の中、
手元でを光るナイフを眺めながら応答する。








互いの表情なんて知らなくて良いのだ。

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米粉めこ - 完結おめでとうございます!とても面白くて一気読みしました! (11月29日 2時) (レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月20日 16時) (レス) @page50 id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
amane(プロフ) - 一気読みしました。とても面白かったです!完結おめでとうございます。 (2021年12月20日 1時) (レス) @page50 id: 9f53b410f9 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!読んでいてとても楽しかったです!!! (2021年12月17日 6時) (レス) id: b0014f1469 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月16日 8時) (レス) @page50 id: 813026887d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白氷 | 作成日時:2021年10月1日 22時

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