#33 ページ33
Aはジトーとした目を彼に向ける。
『……視線が痛いです。
私より坂口さんでも見つめててください。』
｢はぁ…心が痛い。｣
『首領にでも診てもらいましょうか。』
何時も通りにズバズバ鋭い言葉を放つAに太宰はざわめく胸を抑えた。
こうでもしないとまた衝動に乗っ取られるからだ。
『では首領の所へ
今度こそ行かせてくださいね』
全く判ってない。
太宰は横を通り過ぎる彼女を引き留めるが如く、腕を掴んで引き寄せた。
＿＿＿ 唇に触れる柔らかい髪。
抱き寄せた時のふんわりと漂う香りに心が満たされる錯覚に陥る。
目を見開き太宰の突飛な所業に、
小さく口を開け呆然としているAへの想いがより強まる。
ここまでだ私。
止まれ。
名残惜しそうにその頬をするりと撫で云う。
｢…じゃあね。｣
太宰が踵を返す前に視界の端で
此方を振り向いた安吾がまた固まっていた。
.
.
｢……君達どうしたんだい。｣
｢別に何でもないです。｣
『何時通りです。』
｢ならどうして国内の異能組織の資料を二人して提出するのかい。
…私が頼んだのは海外異能組織だよ？｣
隣で首領に向けて重要情報を述べていた坂口さんは未だに動揺していた。
海外異能組織の資料を渡す私も動揺している。
口付けられた髪に触れたくて仕方がないのだ。ざわめく胸を抑えることに必死である。
＿＿じゃあね。
幾度の幻聴か。体温が熱い。
｢……まぁいいよ。
坂口君はこの組織へ乗り込んでくれるね。
後は構わない。戻って良いよ。｣
｢承知致しました。｣
カツンと革靴を鳴らし、
去り行く坂口さんの視線を感じた。
＿＿ また会えたら。
視線も合わせないよう、
小さな声も聞こえないふりをした。
私は何処ともなく駆け入ってきたエリス嬢と会話する首領の事を見詰める
心の中で離れ行く坂口さんの背中を押した。
二度と帰ってこれない可能性もあるからだ。
｢Aも潜るのよね？あの会合に。｣
｢A君に似合いそうだよねぇ。｣
こそこそと愉快そうに此方を見ながら互いに耳打ちをしている彼らに嫌な予感がした。
首領がにこりと微笑みながら差し出すカードを私は手に取る。
｢情報も得られたことだし、
君には仕掛けていた網を引き揚げてもらう。｣
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米粉めこ - 完結おめでとうございます！とても面白くて一気読みしました！ (11月29日 2時) (
レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 完結おめでとうございます！ (2021年12月20日 16時) (レス) @page50 id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
amane(プロフ) - 一気読みしました。とても面白かったです！完結おめでとうございます。 (2021年12月20日 1時) (レス) @page50 id: 9f53b410f9 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - 完結おめでとうございます！！！読んでいてとても楽しかったです！！！ (2021年12月17日 6時) (レス) id: b0014f1469 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます！ (2021年12月16日 8時) (レス) @page50 id: 813026887d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白氷 | 作成日時：2021年10月1日 22時
