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夜は更に闇を溶かしていく。
私達の酒も量を増やしていた。
「貴方子供相手に想いを寄せていたんですか。」
「実際中身は大人だな。」
「織田作の対象年齢は広い事が判ったね。」
水族館に観覧車。
Aと行った所だ。
心当たりがあるが軽く尋問といこう。
話を引き出してやりたい。
何せこの織田作だ。気になる。
試しに中身を知ろうじゃないか。
「どんな子だったんだい?」
「……気は強かったな。冷淡で仕事に対しては真面目にこなしていた。
…仕事の間も常に冷然とした顔立ちを覚えてる。」
「身長は?」
「…150あったか……無いかぐらいだ。
今しっかりと成長しているなら160あるな。」
……Aと同じくらい。
これも当てはまる。
身長は中也と良い勝負しているのが印象的だし。
「太宰君。身長知ってどうするんですか。」
「なァに、私の知る部下に居るか当てはめている最中だよ。裏社会の勢力流れならマフィアに居たって可笑しくないだろう?」
酒をまた一口。
「織田作さんは相手のどんな所に惹かれたんですか。」
「水族館か?…其処へ連れて行かせた時の初めて笑った顔が忘れられないな。」
髭の生える顎を軽く撫でながら織田作は淡々と言葉を紡いでいく。懐古の相手を思い出すように瞼を閉じていた。
「織田作は会いたい?
もしその子が生きているなら。」
織田作は一度瞼を開け、手元にある酒を少し見詰めてから口につけた。
横顔は寂しそうだった。
「…俺は彼奴を惑わせてしまったからな。
会える顔を持ち合わせていない。」
「何したのさ。」
あの織田作がまさか手を出したのか?
同じ事を安吾は思っていたようで固唾を呑む。
私と安吾がほぼ同時に口へ酒を含んだのが最悪だった。
「”俺の家で一緒に過ごすか?
お前と同じ孤児も居るぞ。”
と提案したら
”一人で充分です!私を何だと思っているんですか”って滅茶苦茶怒られた挙げ句断られた。」
____「ぶふぁ…っ…!」
____「ごほっ、ごほ…っ!」
彼らしい本気の再現に酒を噴き出した。
安吾に限っては変に気管に入ったらしく噎せながら胸を擦ってお互い爆笑していた。
「頬ぶたれて一日中腫れてた。」
「あっはっははッ!
そりゃあ怒るさァ!くくっ…!」
腫れた頬が疼いた。
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米粉めこ - 完結おめでとうございます!とても面白くて一気読みしました! (11月29日 2時) (レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月20日 16時) (レス) @page50 id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
amane(プロフ) - 一気読みしました。とても面白かったです!完結おめでとうございます。 (2021年12月20日 1時) (レス) @page50 id: 9f53b410f9 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!読んでいてとても楽しかったです!!! (2021年12月17日 6時) (レス) id: b0014f1469 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月16日 8時) (レス) @page50 id: 813026887d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白氷 | 作成日時:2021年10月1日 22時