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__夢に夢を重ねていた。
数分の間の事だったのに、
私の身体はソファーで横たわっていた。
…夢を数分の間に複数見ていたようだ。
人は未知な生命体だ。つくづく実感する。
___「おはよう、Aちゃん。」
『……だ、……__。』
さぞかし間抜けな表情を私はこの時していただろう。欠伸している最中、言葉を失ったのだから。
隣に太宰幹部の爽やかな笑顔が見える。
昼の幻覚?
瞬きを繰り返して数秒間。
「そんなに見つめられるだなんてやはり私に好意があるんだねAちゃ__」
言葉を止めるが如く素早く彼の黒いネクタイを引っ張り、ソファへ倒した。
馬乗りになってナイフを首に向ける。
幻覚じゃない。現実だ。
「わぁ大胆。」
『何時から部屋に居たんですか…!』
「君が魘されていたぐらいかな。鍵が掛かって無かったから入ってそのまま数十分寝顔見てた。」
もはや首を掻き切る他ないと判断した。
ナイフをさらに包帯のある首へと押し付ける。
『もはや死刑です。さようなら。』
「気が動転している執行人に殺される末路も悪くないはない。」
そわそわする。
この人の声を聞いていると、
直接心に言われているようで。
「あーあ、可愛かったのになァ。
苦しそうに歪むあの顔。もっと見たかったよ。」
ツーっ…と太ももを指でなぞられ、身体が擽ったい感覚に陥る。
駄目だ、またあの時みたいな。
「聞いたよ?
ミスが多くて休ませてもらったと。
やはり効いちゃったのかな…アレ。」
頬を撫でる冷たい手。
固唾を呑む。
違う違う違う。
太宰幹部はナイフを押し付ける私の手首を掴み、そのまま身体を起こした。
身長差がある為に
彼の太股に乗ったまま彼を見上げる形となる。
『私があの事で動揺していると思っているんですか?』
笑ってはいるが、
心の内では冷や汗がじんわりと滲む。
待って、また近すぎる。
これ以上近くに居たくない。
彼はナイフを持つ私の手首を自らの首にまた近づけた。
「その答えは、
”仕事上されたこと無い”身体に訊いてみるよ。」
___ 妖艶な微笑を浮かべる悪魔は云う。
”死の伝達さん”、と。
『…久しぶりに聞きましたね。』
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米粉めこ - 完結おめでとうございます!とても面白くて一気読みしました! (11月29日 2時) (レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月20日 16時) (レス) @page50 id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
amane(プロフ) - 一気読みしました。とても面白かったです!完結おめでとうございます。 (2021年12月20日 1時) (レス) @page50 id: 9f53b410f9 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!読んでいてとても楽しかったです!!! (2021年12月17日 6時) (レス) id: b0014f1469 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月16日 8時) (レス) @page50 id: 813026887d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白氷 | 作成日時:2021年10月1日 22時