【文スト】噛みつき愛。

#16 ページ16

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Aの目は貫く鋭さと冷たさを持っている。



今だって私の事を見抜いて居そうだ。
唯一、私が心から恐れている人物。

唯一、想いを寄せている人物。






彼女に嫌われていることを恐れているから？


似ているから？


傍から離したくないから？







何れでもいい。
だから手に入れたい、と思いたいのだ。








温い手の体温を噛みしめる。



きっと、この手を拒絶する。

何時もと変わらないように。









『…私は完全な黒側です。

もう白にはなれません。




だから此処で”探せる物”を探してます。
そんな私から言えることは、』








Aは思い含んだ目を細める。







口角を微かに上げ、
寂寞さえ感じさせる弱々しい微笑。


今までにない彼女の様子に息を呑んだ。







彼女はこんな表情を見せていたか？
否、初めてだ。








『貴方の探し物(道標)は此処では探せないかもしれませんね。』









美しい。
　






たった、その一言で表せると思う。

否、その一言でしか表せ無かった。






喉に引っ掛かる物を堪え、
彼女の言葉の重みを噛みしめた。


なら迷い続ける他無いのか。









『これは…答えになったでしょうか？
太宰幹部。』









頼り無さそうに眉を下げて問う彼女は可愛いらしい。


嗚呼、






＿＿ 好きなんだよ。









もう衝動的だった。









｢…充分だ。｣









彼女を引き寄せ、頬に接吻をしたのは。








｢君にしか聞けないことだから。｣









＿＿＿もう、地上が近い。

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