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観覧車は頂上を過ぎ、
地上へと降り始める頃である。
見所を逃した景色関係なくこの室内に居る二人の雰囲気は静かな威圧感を携えていた。
『知ってますよ。
前回の作戦で貴方が”中原幹部を囮にして犠牲を多く出した”こと。』
不適に彼の唇が歪む。
ナビゲーターを担当する私は当然作戦書を見ている。
作戦前見た内容と、報告書と共に一度返却された作戦後の内容には”修正跡”が残っていたのだ。
そして内容は違っていた。
『首領が見通すものには、
修正跡なんて存在してはいけないものです。
普通なら首領直々に呼び出しですから。
しかし首領は”敢えて”見通した。
何故なら”貴方の作戦だった”から。
貴方の作戦を暗黙の承知の上。
決行した作戦なのですよね?___』
畳み掛けるように言う。
あの日の中原幹部は血を多く流していたのを思い出す。一部の傷は奇襲による深い切り傷があった。
「──で?
別に使えた駒が沢山死んだだけだ。
中也だって少し食らったぐらいだし。
君には何も支障は無いだろう?」
少年のような幼さと悪魔のような冷たい笑いが混じっているように、その表情が私には見えた。
『…えぇ、
確かに私には何一つ支障はありません。
けど貴方は……。』
今は人の死を軽々しく見ている。
指一本動かせば、
自らの手を汚さずに人を消せるんだもの。
…感覚が麻痺しているのだろうな。
だからこそ分かってない。
『そ う い う 調 子 だから、
”道標”が見つからないのも当然ですよ。』
揺らいだ目が私を捉えた。
彼は何かを言い出そうと一呼吸。
だがまた堪えるように声へ感情を抑えるようにして言う。
「…なら教えてよ。
君は…___ ナビなのだろう?」
私の手に重ね包むようにして、
嫌いな冷たい体温の手が触れる。
太宰幹部は、
親に怒られ、許しを懇願するような子供の感情を滲み出すように顔を歪めていた。
…こんな、表情するのか。
微かだけど手は震えていた。
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米粉めこ - 完結おめでとうございます!とても面白くて一気読みしました! (11月29日 2時) (レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月20日 16時) (レス) @page50 id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
amane(プロフ) - 一気読みしました。とても面白かったです!完結おめでとうございます。 (2021年12月20日 1時) (レス) @page50 id: 9f53b410f9 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!読んでいてとても楽しかったです!!! (2021年12月17日 6時) (レス) id: b0014f1469 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2021年12月16日 8時) (レス) @page50 id: 813026887d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白氷 | 作成日時:2021年10月1日 22時