【文スト】噛みつき愛。

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＿＿＿やぁ、Aちゃん。





｢今日は何もないのかな？｣


『書類という付き合い相手が居ますので。』




あぁ、またか。
心の中で舌打ちをしながら、平穏を装って無感情にその相手を見据える。



相手は変わらない微笑みで、

私の手に自らの手を絡めてくる。







｢へぇ、つれないなぁ。
私という付き合い相手はどう？｣







弧を描く口元から出てくる甘い声。

端麗な顔立ちとは裏腹に多い包帯と眼帯の男。




＿＿＿”最年少幹部 太宰治”







『お断りです。
私は貴方よりも、書類の方が会いたいです。

では。』







絡んできた手を払いのけ、
なるべく冷たい言葉を並べた。



その場から足早に去る。








背中に刺さるような視線。

一切振り向くことなく自室へと向かった。







＿＿『……はぁ、気持ち悪。』








恐ろしく冷たい体温の手を思い出し、
顔を歪める。非常に深いな気分であった。




興味のない男に手を握られ、

毎日のように絡んでくる口説き文句にはもはや地獄かと疑うこの頃。






書類に書く間も、

あの不快な体温が忘れられずペンが進まなかった。




……いっそ噛みつき、潰したい。



それは幹部への憎々しい思いであった。









.








彼女が歩き去った廊下を一人歩く。


あの子の体温は本当に暖かい。
未だにあの感覚を思い、指先を見つめる。









凛とした口調。

その声を閉じ込めたい。

あの何一つ変わらない瞳に私を映してやりたい。

手の届くところに置きたい。

触れたいなぁ…。


変わらない表情を、崩してやりたい。


泣かせたらきっと……＿＿。








｢ふふふ…っ｣









やってやろうじゃないか。




彼女が触れていた指先を唇にあてる。







＿＿ この口で噛みついてやろう。

#2→

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