手を伸ばして

５. 縮まらない距離 ページ5

薮side


「ふぁ…光おはよう」


光「あ、薮おはよう！もうできるよ」


まだ寝ぼけている中、光が朝食を作ってくれている姿を見ながら、熱いコーヒーを飲んでゆっくりする。


高「おはよう…」


大「ああ〜眠たい…」


少し遅めに起きてきた2人はまだ眠たそう。
みんなで朝食を食べるため、椅子につく。


大「伊野尾さん来ないね」


いつまで経っても来ないからもう先に食べ始めてしまった。


高「ってゆうか高校どこなんだろうね？」


「あ、そうそう。何か高木と同じ高校らしいよ」


大「え！そうなんだ！でも学年は違うんだよね」




朝食を食べ終わりまだ学校に行くには時間があるからソファでゆっくりする。


高木と大ちゃんは電車通学だから朝出るのは早い。


高木と同じ学校ならもうそろそろ出ないと間に合わない時間なのに、彼はまだ来ない。



ガチャッ


部屋から出てきた高木と同じ制服を着た彼。


光「あ、これ作ったから。持って行って」


そう光が渡したのはいつもみんなに作ってくれているお弁当。


伊「いい、いらない」


「せっかく光が作ってくれたんだから持って行きなって、な？」


そう言うと不機嫌そうな顔をしたけど光からお弁当を受け取って出て行く。





「待って。駅までだろ？俺もそこまで歩いて行くから一緒に行こうよ」


急いで後を追いかけて隣に並ぶ。


返事は返って来ないけど無理やり隣を自転車を押しながら歩く。


「光、冷たいとこあるかもしれないけどいい奴だから気にしないで？」


「君…伊野尾でいっか、伊野尾は高木と同じ高校だから何かあったら高木に言いな？学年は違うけど」


返事が全くないから聞いているのか分からないけど俺はひたすら話しかける。


「何か困ったことがあったら俺でも、誰でもいいから言いなよ」


伊「……別に」


そう言って、伊野尾はさっさと駅に入っていってしまった。


何か分からないけど俺が伊野尾を初めて見たときから感じるオーラ。


ほっといたらいけないと感じさせる何かが彼から伝わってくる。



そんな後ろ姿を見ながら俺は自転車に乗って漕ぎ始めた。

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