手を伸ばして

１８. 心の叫び ページ18

光side


あいつがどこかに出かけてから3日。


あいつがいないのはつい1ヶ月前に戻っただけなのに何だか変な感じ。


ガチャッ


大「わっ！伊野ちゃん〜！」


玄関が開いた音がしたと思ったら大ちゃんがパタパタと走っていった。


大ちゃん、あいつの事好きすぎだろ…


廊下から２つの足音が聞こえて大ちゃんに無理やり連れられたあいつが入って来る。


薮「お〜伊野尾おかえり」


高「おかえり」


みんながおかえり、と彼を迎え入れると何故か驚いたような顔。


何で驚くのよ。


かと思った途端、彼は表情を歪めて切なそうな、辛そうな顔をした。


そんな顔、初めて見る。


でも、一瞬だったから見たのは俺だけかもしれない。
薮も高木も大ちゃんも何も気にしてないみたい。


何だか胸騒ぎがするのは気のせいかな……








「大ちゃんご飯できたから呼んできて」


誰とは言わなくても大ちゃんの係みたいなものになっていて、ご飯ができると毎日彼を呼びに行く。


最近は自分で来てくれたり、来てくれなかったり。


来てくれるようになっただけましだけど…






「離せよっ！！どうせっ、お前らだって一緒なんだろっ！！」


「ちょっと！伊野ちゃんやめてっ！！」






出来上がった料理を机に運んでいると聞こえた叫び声。


大ちゃんの焦ったような声も聞こえて来て、良くない状況だという事は分かった。


高「え、何？喧嘩？」



「だから離せってっ！！！」



さっきよりも大きい、悲痛がこもったような叫び声が聞こえてきてやばいと思って慌てて部屋に向かう。


部屋に入ると何で持っているのか分からないナイフを持ったあいつと、それを必死に抑える大ちゃん。


え…？
死のうとしてるの？


なに？
何があった？


分かるのはこの3日の間に何があったという事。
…いや、もっと前から死のうとしていたのかもしれない。



薮「伊野尾っ！やめろって！ナイフ離せっ！」


薮のそんな叫びではっと我に返った。


気づけば俺以外の3人係で彼を抑えようとしていた。




伊「離せってっ！もう、無理なんだよ…！！俺は、俺はもう死ぬしかねえの…っ！離せよっ！！」



死ぬしかない…？

彼のそんな叫びがもう一度、俺の耳に響いた。

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