個性【魅了】の人間タラシ (ページ5)

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熱烈峻厳ページ5

芝生の上に車椅子を止めると、側近は車椅子から手を離した。

「お家はAさんしか継げないです、養子を迎えようにも、お爺様もお父様も男児は生まれず、分家という存在すら無いですからね」

『……』

とても昔の話を思い出した、光る赤子が産まれ、個性が出現し初めたあと、この家系は外との関係を遮断した。

あの時代、政治はほぼ無機能状態、自分の名誉が可愛い先祖は個性が定着するまで田舎で暮らしていたそうだ

到底子供など産める状況でもなかったためか、家系の数は減少していた、そのツケが、俺に来たのだろう

『……肩の荷が重い』

側近はその言葉を、聞かないふりをした

ーーー

退院の機会は案外早く来て、車に乗せられた俺は家へ向かっていた

平日だからか車も人も少なく、順調に家まで走る。ここでまた事故が起きたら病院に戻してくれるのだろうか

そんなタラレバを考えるくらいには、あの家に苦痛を感じていた

家に帰ると、横開きのドアを開ける、靴を揃えているとあることに気がついた

靴が多い、大きな靴と小さな靴が1足ずつあった。来客か、また挨拶をしないといけないのだろう。

ため息を吐いて家に上がると丁度客間から父親の影が伸びた

「こっちへこい、今日は客が来ている、無礼のないように」

『……』

俺は無言で客間に向かった、ああ、退院する時わざわざスーツに着替えさせたのはこのためだろう。

にしても、いつもは家に帰ってきた後は、仏壇に一度祈り、先祖に帰宅の挨拶をする。その工程を省くということは相当重要な客人なのだろう。

また肩の荷が重くなることを感じながら、客間に足を入れると、その人は知っている人物だった

『……エンデヴァー……？』

「……轟炎司さんだ、そして、息子さんの轟燈矢くん。A、挨拶しなさい」

エンデヴァー改め轟炎司、この国のナンバー2ヒーローであり、厳粛な性格、記憶が無い程の幼少期に一度会っているらしいが、物心着いてからは初めてだった

政治家は社会活動が活発なヒーローと関わりが多い、家に尋ねてくるのも納得だ

俺は父親の隣に座り、挨拶をした

『……木津家の長男、木津Aです』

頭を下げ、轟炎司さんの方へ向く、ヒーロー活動をしている時は炎を出しているため少々禍々しい雰囲気があったが、炎が引いている今、禍々しさより威厳があった