個性【魅了】の人間タラシ (ページ1)

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プロローグページ1

齢十歳

無駄に広い約2141.9坪のこの土地の、約500坪の日本家屋には畳が腐るほど満遍なく陰湿な空気が漂っていた。

家紋が描かれた畳の縁を踏まぬように、座布団の上に正座になる、乱れたスーツを軽く整えていると、貝ボタンの冷たさが鋭く肌に伝わった。

スラックスには毛玉や塵ひとつない、些細な暇つぶしも出来なかった。残念だ。俺は畳の市松模様の四角を数えることに専念した。

その自分にとっては神聖な行為を中断させたのが、目の前の人物、父であった

「明日の午後7時、杉ノ間に来い、将来について話がある。そして41代目当主に成る者の自覚を持て。もう10は過ぎたのだぞ」

今、目の前に置かれた夕餉と、自分が今丁寧に布で撫でている食器だけが、俺の荒波のような怒りの心を落ち着かせた。歯に力を込め、発散する。

まだなにか言おうとしている父の様子に、俺は大きく舌打ちをし、ため息を吐く。全てを燃やして灰にしてやりたい。そんなタラレバを考えた。