五十七話 ページ9
凍傷だろうか、言うことを聞かない指先を必死に動かして、ピッケルを握り締める
過去、登山仲間が俺の腕で息を引き取った、その冷たさと似たようなものが腕に纏わりつく、まるで呪いだ
ただ、過去なんてどうでもいい、しっかり葬式もして、骨を箸で拾い上げ壺に納めた
その様を見ても尚、山へ向かう自分は、自分でもイカれていると思う
バカと煙は高いところが好き、だとしたら俺は天性の多馬鹿野郎だ
崖の上に身を乗り出すと、もう後は、軽い坂道のみだった
『ッッはー…はー…』
個性を使って一気に登ってきた為、肺が圧迫されるような酸素不足に陥った
酸素ボンベの余裕は全然ある、ゆっくり呼吸を整え、ゆっくり、雪を踏みしめて、上を目指す
ここまで長かった。本当に、色々なことがあった
俺はその感情を噛みしめながら、一歩ずつ足を前に出した
そして、ついに念願の光景が目の前に広がった
『はは、こりゃ、1000万の価値あるわ…』
そのあまりにも広大な景色に、呼吸を忘れた
今これを独り占めしていることに感動する
天国、黄泉、極楽、これらがあるなば、その景色はきっとここと同じだろうだろう。
衛星電話で報告しないと
『午前11:52、登頂成功、ふー……』
«おめでとう、天神A君。そしてメリークリスマス、今日はクリスマスよ»
『え、そうなんですか…』
俺はトランシーバーで日付を確認する、確かに12月25日、クリスマスとなっていた
『じゃあ、そちらに写真をプレゼントしますね』
ポケットから寒さに強く改造したスマートフォンを取り出す、電源を入れ、目の前の光景を写真に収めた
そして、麓の基地へ送る
«綺麗に撮れているわ、素敵、これをニュースサイトに載せても良いかしら？»
『ええ、もちろん、ただ最初に例の人物に送ってくださいね、ネットニュースは…うーん、今日の夕刊辺りでお願いします』
«わかったわ、ありがとう»
そう言ってトランシーバーは切れた 俺は再び、目の前に広がる壮大な自然を見る
達成感を通り越して、もう何も感じない
俺はその場に座った
『はは…夢みたいだなぁ〜…』
そう呟いて、空を仰いだ
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パインアメ(プロフ) - この作品を読み終えた者です。すごく感動しました！こんなに素晴らしい作品をありがとうございます😩🫰🙇♀️もうほんとに、最初から最後までエモかったです🥲 (1月1日 8時) (
レス) id: e9cfe4dc1d (このIDを非表示/違反報告)
冷夏(プロフ) - くもくもさん» コメントありがとうございます😊🙏すごく褒めて貰えて嬉しいです✨是非最後までご覧下さいね💕︎ (8月30日 23時) (レス) id: 0d9cd0d586 (このIDを非表示/違反報告)
くもくも(プロフ) - めちゃくちや好きです…こんなにも素晴らしい作品を本当にありがとうございます。好みにぶっ刺さりました！本当にありがとうございます。 (8月30日 0時) (レス) id: 702007f6f6 (このIDを非表示/違反報告)
冷夏(プロフ) - スイレンさん» コメントありがとうございます！毎日ご覧頂きありがとうございます！これからも投稿頑張りますね！ (8月18日 18時) (レス) id: 0d9cd0d586 (このIDを非表示/違反報告)
スイレン - 遅くなってしまい申し訳ないです。続編ありがとうございます！毎日楽しみに見させていただいてます！ (8月17日 0時) (レス) id: 1465516475 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷夏 | 作成日時：2023年8月14日 23時
