六十八話 ページ21
手帳を握りしめる。
今まで、もしかしたら連絡が取れないだけで、どこかしらにいるのかもしれないと非現実的なことばかりを考えていた
もし生きていたら、またあの山に登りたい、この山に挑戦したい。そんな考えを巡らせていた。
これでやっと確信した、アイツはもう死んだ。
「……クソッ……」
やり場のない負の感情が煮詰まっていた
ーーー
日本に戻り、遺体を火葬している最中、関係者が多く集うこの大広間の和室には哀愁が漂っていた
目の前の精進料理も食べる気になれない。自分で盛り付けて食べる方式だった為、自分の皿は真っ白なままだった
「天神君が亡くなったら、この登山界もどうなることやら……期待の星でしたのに」
テレビで見たことある登山家だ、その人物は煮物を口に入れた
「えぇ、登山家が盛り上がってた時代も、もう終わりですかね」
皆口々にそう語る、アイツはこんなにも慕われていたのに、呆気なく死んだ
心に穴が空く、この比喩はとても適切だった
«天神Aさんの火葬が終わりました。皆様、移動の準備を始めてください»
館内放送でそう流れ、俺は身支度を整えると席を立ち上がり、葬儀屋に着いて行く、これから骨を箸で運び、山頂とは無縁の狭く冷たい骨壷に収められるのだろうか
赤い登山着が目に焼き付いて、離れない。
ーーー
墓に骨壺を入れる作業も終え、あとは一周忌までアイツの予定はなくなった
ようやく、実感が湧いてきた、
アイツの笑顔も、声も、肌の感触も、思い返す度に薄れている気がした
きっと、あと何十年かすれば完全に忘れてしまうのだろうか
視界がぼやける、目眩ではなく、どうやら涙のようだった
抑え方の分からないこの涙が、段々と頬を流れ、溢れていく
喪服がなんだか鎧のように重くて、俺は1度最寄りの公園で休むことにした
自動販売機でアイツの好きだった清涼飲料水を購入し、近くのベンチに座る。初夏の暖かい木漏れ日が、体を包み込む
そんな中、親子連れが目の前を通る
「大爆殺神ダイナマイト……？」
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パインアメ(プロフ) - この作品を読み終えた者です。すごく感動しました！こんなに素晴らしい作品をありがとうございます😩🫰🙇♀️もうほんとに、最初から最後までエモかったです🥲 (1月1日 8時) (
レス) id: e9cfe4dc1d (このIDを非表示/違反報告)
冷夏(プロフ) - くもくもさん» コメントありがとうございます😊🙏すごく褒めて貰えて嬉しいです✨是非最後までご覧下さいね💕︎ (8月30日 23時) (レス) id: 0d9cd0d586 (このIDを非表示/違反報告)
くもくも(プロフ) - めちゃくちや好きです…こんなにも素晴らしい作品を本当にありがとうございます。好みにぶっ刺さりました！本当にありがとうございます。 (8月30日 0時) (レス) id: 702007f6f6 (このIDを非表示/違反報告)
冷夏(プロフ) - スイレンさん» コメントありがとうございます！毎日ご覧頂きありがとうございます！これからも投稿頑張りますね！ (8月18日 18時) (レス) id: 0d9cd0d586 (このIDを非表示/違反報告)
スイレン - 遅くなってしまい申し訳ないです。続編ありがとうございます！毎日楽しみに見させていただいてます！ (8月17日 0時) (レス) id: 1465516475 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷夏 | 作成日時：2023年8月14日 23時
