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「おかえり、遅かったじゃん」

なんでこいつトイレの前で待ち伏せしてんだ

『えと、なに?』

「なにって…分かってるだろ?」

そいつは私の耳に囁いた

「2人で抜けようよ」

『は?』

私こいつと学生時代そんなに接点あったっけ…

あ分かった、彼女作りか?そんで簡単そうな私に声をかけてるとか?

『ごめん無理』

「いいじゃん、どうせ彼氏もいないんだろ」

そう言って男は私の肩に腕を乗せた

『ちょ、離して…』

「彼女から手を離してくれませんかね?」

『れ…と、透さん?』

なんでいるんだこの人

戸惑っているうちに奴の腕から解放され、手を引かれてすっぽり透さんの腕に入った

「なんだよ、お前」

「Aさんの恋人ですが…なにか?」

あまりのレベルの高い顔を向けられて戸惑ったのか、男はそそくさと帰っていった

透さんに声をかけようとしたらまた手を引かれて、私が座っていた席へ向かった

「え、ちょ…なにあのイケメン…」

「もしかしてAさんの彼氏とか?」

「いやいや…似合わないでしょ…」

聞こえてるわ!似合わないなんて私が1番知ってるわ!

透さんは私の荷物も取り、肩を抱き寄せ

「こんばんは、恋人を迎えに来たので、彼女は今日はこれで失礼します」

とまあ安定の安室スマイルを輝かせてから店を出た

後ろからは黄色い声が聞こえる

帰り道、透さんは口を開かないまま手を引いていた

『あ、の…透さん?』

「……」

いくら馬鹿な私でも分かる、彼は怒っている

でもどうして怒らせたのかわからない…

家へ着くと、玄関のドアが閉まると同時にキスをされた

前とは違う、深いキス

初めてのことで戸惑ったし、息も出来なくなってきたから彼の胸をどんどんと叩く

『ん、はぁ…れい、さん?』

「…すまない、君に怒っているわけじゃないんだ」

彼は私の首に顔を埋めた

サラサラした髪が少しくすぐったい

「だから嫌だったんだ…君は自分で思ってるよりも魅力的だと自覚した方がいい…」

『え』

「あんな男と近い距離でいるのを見ただけで嫉妬で狂いそうになる」

彼は顔を上げ、両手で私の両頬を撫でた

『零さ…(「A」









「君が好きだ」

『……えっ』

「今はまだ何も言わなくていい、君の答えは分かってる…
ただ僕が君のことをどれだけ心配しているかをわかって欲しい」

『零さ…』

「いくらでも待つから…いつか、僕の気持ちに答えてくれ」

そう言った零さんの顔は

酷く苦しそうで

『……はい』

酷く美しかった

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作者名:やきなす | 作成日時:2020年9月12日 10時

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