決意 ページ1
姫野さん側との話し合いが終わった後、私は先輩マネージャーに付き添われ、事務所が契約しているクリニックに行き、内密に診察を受けた。
勿論、口外しないとの約束通り、撮影中の事故ということにして。
幸い、足の捻挫以外は特に酷い怪我もなかったから、そのまま事務所へと戻り、心配して待ってくれていたほっくんと2人、改めて事情を聞かれた。
『篠原さん、今日は本当に大変だったね。とにかく、無事で良かった。
うん、、、。それで、2人に確認したいんだけど、姫野さんが嫉妬するような、、その、まさか、付き合ってたりは無いよね?』
どうしよう。
嫌な汗が出る私を守るように、ほっくんが言った。
『もちろん。付き合っていませんよ。
ただ、俺が個人的な感情で、篠原さんに好意があるのは事実です。
あ〜でもそれは、恋愛感情とも少し違うというか。
いつも一生懸命で真面目で、精一杯サポートしてくれる彼女を、とても素敵だと思っています。
でも、篠原さんは仕事一筋で、俺の勝手な気持ちが今回の事件を巻き起こしたんです。
だから、彼女は一切悪くありません』
私のために、全てを自分のせいにした彼。
どうしようもないくらい、胸が痛んだ。
違うのに。
ほっくんは、何も悪くないのに。
【違います!】そう言おうと身を乗り出した私を、ほっくんは優しく止めた。
『ほら、まだ無理したらダメだって』
その眼差しは、泣きたくなるくらいに男らしくて、優しい。
『お願いします、篠原さんを辞めさせたりしないで下さい。
俺、彼女がいてくれると、本当に安心出来ますし、仕事に集中出来るんです。
このドラマも、最後までしっかり頑張りますから』
ほっくんの懸命の説得も、周りの皆さんは苦い顔をしている。
私が、、私がいなくなれば、全部丸く収まるんだ。
だから私は、決意したんだ。
1044人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:恋柱 | 作成日時:2021年6月17日 18時