宙 岸side ページ10
『今日、新曲の振付レッスンだったんです』
慣れない煙草をしまうと、遠くの夜景を眺めたまま、彼女へ話し出した。
『俺、本当にみんなより覚えが悪くて・・。俺のせいで、何回もストップかかって。
イライラしたんです、自分に』
Aちゃんは、何も言わず、俺の話を聞いている。
『俺は、ここにいていいのか？とか、色々考えてたら、無性に・・会いたくなりました』
『・・え』
『あの店で・・、応援してますって、笑ってくれた人に。ホールでの収録にも来てくれた・・Aちゃんに』
『私に、ですか・・？』
いきなり連れ出して、キスした俺を、きっとAちゃんは軽蔑しただろう。
酷いことをした、と激しい後悔だけが襲う。
あの日のAちゃんの笑顔が、どうしても忘れられなかった。
それが何故なのか、よく分からなかったけど、収録で再び出会ったAちゃんを見て、思った。
初恋の人に似ているんだ、って。
この世界に入る前、初めて好きになった女の子。
好きだと言えないまま、終わった淡い恋心。
別人だって分かってる。
だってあの子は、もういない。
遠い宙の向こう。
またあの店に行けば、なぜか会える気がして、暗い気持ちのまま、車を走らせた。
そして
君はいたんだ。
キラキラしたピアスを見つめる横顔が綺麗で
ただ、また会えたことが嬉しくて
自分から声をかけて
'"喜んで欲しい"
そんな思いだけで、ピアスを買った。
・・ファンの方に恋したらダメだ。
だから
遊びだと言った。
その唇を奪った。
『最低なことをしました。すみません・・。家まで、送らせて下さい』
頭を下げた俺の手を、Aちゃんは、そっと包んでくれた。
『やっぱり、岸くんは、思っていたままの、優しい岸くんでした・・』
そう言って、涙を流す君。
『煙草、本当は吸わないんでしょ？』
『えっ？何で！』
『元彼がね、煙草吸う人だったんです。だから、なんとなく、慣れてない気がして？』
『あぁ〜、もう俺、最悪だわ！なんか、めちゃくちゃになりたかったのに・・』
そう言って頭を掻いた俺を、Aちゃんは静かに見つめていた。
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夢(プロフ) - まっちゃさん» こちらこそ、温かいコメントをありがとうございます！岸くんが大好きなので、どうしてもSキャラに書けない作者です(^^;)感想ありがとうございました！ (2020年3月20日 16時) (
レス) id: c6e2ee7963 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - はじめまして！岸くんの前作も、今作も読ませていただきました。どちらも大好きです。今作は甘さの中にも切なさが混じっているお話に夢中になりました。また岸くんのお話を書いていただけたら嬉しいです！素敵なお話をありがとうございました！ (2020年3月20日 13時) (レス) id: 0a9eec8a22 (このIDを非表示/違反報告)
夢(プロフ) - ちゃちさん» ちゃちさん、コメントありがとうございます！ようやく名前変換の謎が解けましたので、また書いてみようと思いました(^-^)これからもよろしくお願いします！ (2020年2月9日 9時) (レス) id: c5a5700a1a (このIDを非表示/違反報告)
ちゃち(プロフ) - 以前、別作品でコメントさせていただきました。岸くんの新作ありがとうございます！待ってました☆うれしいです(^-^*)更新楽しみにしています！ (2020年2月8日 23時) (レス) id: 90dd5545be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢
| 作成日時：2020年2月8日 22時
