君と私と。俺と君と。

Fs#7 carry off ページ9

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昼前かかってきた一本の電話。







｢あのさ、｣

｢ん、｣

｢私、幸せになれるのかな？｣





そんな、頼りなくて、

不安そうな声だった。



今日、晴れ舞台のやつが何言ってんねん。






｢いい人、なんやろ？｣

｢………うん、｣

｢じゃあ、幸せにしてもらい？」

｢……大丈夫かな、｣

｢…大丈夫やって、」







俺の好きな人は、

今日、俺ではない人と結婚式を挙げる。




ずっとずっと好きで、結局今でも好きな人。

だけど、想いを伝えずに、この恋は終わる。

ううん、終わらせるって決めた。






｢遥輝が言うなら、間違いないか、｣

｢……そうやで」






Aが幸せになるなら、笑顔になれるなら、

俺はその犠牲でいい。






｢今日、やっぱり…来れない？｣

｢……うん、ごめんな、」






“行けない”なんて真っ赤な嘘で

ほんとは“行きたくない”だけ。

間近でその“幸せ”を見たくないだけ。






｢ううん、忙しいもんね？｣





そんな悲しそうな声すんなや。

俺、そんな事でも期待、してしまうんやで？


……Aの俺への想いがただの友達でも。





｢その代わり、Aが困ったらいつでも駆けつけるからな、」

｢……ありがとう、嬉しい｣

｢じゃあ、……頑張ってな」

｢…うん、またね、｣





どちらから切ってもいい電話は

どうしても、自分から切れない。


切ったら、もうAは誰かの奥さんで

俺のにはならないって、

線引きされてしまうから。


切ったらAとの繋がりが、

もう、話せなくなりそうで。


俺はただ、怖い。


怖くて、

通話を終わらせるボタン一つ、押せない。


………ごめん、俺、まだAが好きや。


ほんとは今すぐ迎えに行って、

Aが好きだって伝えて、

Aが例え

違う人を好きでも俺のそばにいて欲しい。





｢……遥輝、｣

｢…ん？」

｢……お願い、助けて｣

｢…」

｢……私、ほんとはね、……結婚したくない｣

｢………今行く｣






何をなくしても、何を捨てても、

俺はAを離したくない。

いや、きっと、離せない。



例えそれが、どんなに苦しい道だとしても。








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