いつも、ありがとう。 (ページ17)

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「さーせん笑

初めまして。深澤辰哉っていいます。よろしくね。

あ、ねえねえ外見た？雪降ってきたよ。今年はホワイトクリスマスになりそうだね」

「…ゆき」

「ここの窓からも見えるんだよ。少しだけベッド動かそっか。｣

ふっかが窓が見える角度までベッドを動かすと山下先生がカーテンを空けてくれた。

「…ゆ、き」

「そう、雪。綺麗だね。」

ふっかはいつもの優しい笑顔を浮かべながら女の子にそっと寄り添う。

彼女は何も言わずにじっと外を見て、俺もふっかも山下先生も、何も言わずにそっと見守る。

ふと彼女を見ると、静かに涙を流していた。

「あ…どうしたの？どこか辛い？」

俺の問いかけに小さく首を振る。

「わか、んない…」

「…分からないね。大丈夫、少し休もう。そばにいるから、安心して？ね？」

ふっかはそう言うとベットのリクライニングをフラットにして布団をかけ直してあげた。

まだ鎮静が完全に覚めていないのであろう彼女は目を瞑ると静かに寝息を立てはじめた。

「…山下先生、どう思いますか？」

「恐らく解離性健忘だろうな。脳には異常はなかった。頭部外傷もみられない。身体中の痣や名前が無いという点からも虐待されていたのはほぼ間違いないだろう。深澤はどう思う？｣

「僕も同じ意見です。ただ、他にも心に傷があるのは確かだと思います。どんな状況だったのか分からないと何とも言えませんが…」

「…まああとはお前らに任せるよ。俺にできるのはここまでだ。またなにか分かったら教えてくれ。」

「はい。また検査のとき山下先生にお願いすると思います。よろしくお願いします。」

ふっかと言葉を交わした先生は俺の言葉に笑って頷くと診察室を出ていった。