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「アイツな、言うてん」
「Aのこと待ちたいって俺に言うてん」
「いつか、また会わせてほしいって。」
流星は凛としていた。
真っ直ぐに私を見て、堂々としていて。
そんな彼がゆらゆらと、揺れているように見えるのはきっと、私が、震えているからで。
ああ、どうして。
どうして、あんなにも大切だった貴方を
忘れて生きてきたんだろう
私が気にも留めずに過ごしてきた年月は、彼にとってどれだけ孤独で苦しいものだったんだろう
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「行け」
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あいつはずっとAのこと待っとるよ
流星の左目から雫が落ちたのは錯覚?
返事をするよりも先に、靴は走り出して
頰を切る風が痛いけれど、涙が溢れるけれど。
あの日、また会えたあの日。
「はじめまして」じゃなくて「こんばんは」と笑った君を信じても、いい?
あの時と変わらず、私をAちゃんって呼んだ望と、もう一度。
握りしめた携帯電話
もう、落とさないよ。何があっても。
強く強く握りしめた。
バン!と音を立てて開かれた襖の奥で
「わ、びっくりした」と大袈裟に肩を揺らす
愛しい、彼。
「流星もAちゃんも遅いねん」
頰を少し膨らまさせて、こっちをちらりと見る望に
心は高鳴って。また泣いちゃいそうで。
少しだけ息を吐いて、彼の目を見て、小さく息を吸う
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「おかえり。待っててくれて、ありがとう」
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魔法がとけたその先で
笑う、君が見えた。
Fin
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作者名:ゆき | 作成日時:2017年3月26日 10時