霧中のドラクロワ/杰 ページ14
完全に逃げる意思など失ったような彼女に視線を落とし、リッパーはやはり愉しげに微笑した。変わった子。本当はもっとここで話していたいが、今は駄目だ。ここには、このゲームには、それなりにルールというものが存在するのだから。
「まさか、レディにそんな手荒な真似は。しっかりチェアまでエスコートさせて頂きますよ」
刃の爪が小さく笑う。その凶器でAを傷付けないよう注意しながら、リッパーは彼女を抱き上げた。本当に抵抗する気も起きないのか、Aは微かに目を細めただけで身動ぎ一つしようとしない。彼女の白い頬に付いた土を優しく拭ってやってから、彼はなるべく遠くのロケットチェアへと歩き始めた。
風が吹き、木の葉の天蓋が騒めく。まるで、その少女を離せと忠告するかの様に揺れる木々を横目にリッパーは淡々と歩み続ける。いや、それとも彼らは見守っているのだろうか？追う者と追われる者。その立場には相応しくない、少々特殊な彼と彼女の関係を。
Aは絹の様なアッシュブロンドが特徴的な、紫の目を持った少女だった。荘園にやって来た時から彼女はどこかぼんやりとしており、緊張感溢れるゲームの際もなんとなく心ここにあらずといった感じであった。だからこそ、リッパーは彼女が気になったのかも知れない。初めての対戦の途中、Aがその深い色の瞳で自分の事を見た時から。
「折角ですから少しお話でもしましょうか。Aさん、貴女は何故荘園に？」
いかにも退屈を装い、リッパーが軽い調子で尋ねる。本当はまだ未知に溢れた彼女の事が知りたくて知りたくて堪らなかっただけなのだが、悟られるのは不味い。果たして彼の真意に気が付いていたのか、それともいないのか。Aは少し眉を動かし、乾いた口調でぽつりと呟いた。
「お金。それだけじゃあ駄目かな？」
「いえ、とてもシンプルで分かり易い。では何故お金が必要なので？」
リッパーは「見た所、貴女は裕福な家庭の出のようですが」と言い、Aに向かって仮面の下で微笑みかけた。確かに彼女が身につけたワンピースや帽子の類は高級な物で、とても金に困った困窮者には見えない。しかし彼女はその問いを耳にした瞬間顔を顰め、恨めしそうな表情でリッパーを睨みつけた。「……それ、聞きたい？」と紡ぐ声音はいかにも不機嫌そうだ。
「ええ、差し支え無ければ」
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聴(プロフ) - 十弧さん» いえいえ！お返事ありがとうございます！相変わらず綺麗な文章でとても羨ましい....！ゆっくり十弧さんのペースで体調に気をつけつつ更新頑張ってください！ (2019年8月17日 22時) (
レス) id: c7868a9ed4 (このIDを非表示/違反報告)
十弧(プロフ) - 聴さん» お久しぶりです…！最近うらつくに出入りする間隔も長くなってきていて、中々お返事出来ずに申し訳御座いません。第五人格良いですよね〜！私も大好きで書いていて楽しいので、そう仰って頂けて嬉しいです！これからも少しずつではありますが書いていきたいと思います！ (2019年8月13日 13時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
聴(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えておいででしょうか。リトの親です。最近第五人格を始めたので十弧さんの第五人格が読めてハッピーです！ありがとうございます！ (2019年8月9日 19時) (レス) id: c7868a9ed4 (このIDを非表示/違反報告)
十弧(プロフ) - ナ子。さん» コメント並びに応援のお言葉、有難う御座います。自分で言うのもなんですが、キャラだとおジョゼが一番特徴的かもしれませんね(笑)更新は遅めですがこれからも楽しんで頂けるよう精進して参りますので、何卒宜しくお願い致します！ (2019年4月21日 9時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ナ子。(プロフ) - 少し前から読ませていただきました・・・とてもキャラが立つ文章のため面白く読ませてもらってます。応援してます！ (2019年4月21日 9時) (レス) id: 848e96a0c3 (このIDを非表示/違反報告)
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