カーテンコールは何処へ/杰+白 ページ12
無論、逃げ出す術が無いわけではない。もがけば割と簡単に逃げ出す事も出来るが、しかしこの二人。遊んでいるように見えてやはりいつも通り抜け目なく、絶対に唯一の脱出経路であるハッチのある場所には近付こうとしないのだ。
希望的観測に縋るなら別だが、恐らく二対一の状況で橋の反対側まで逃げ切る事は不可能に近い。現に二回程試したがあえなく失敗した。それからはもうAも諦めてさっさと脱落しようと大人しくしているのだが、リッパーと謝必安は完全に遊ぶ気でいるようで全くロケットチェアに座らせる様子が無い。因みにAと遊ぶのではない。A“で”遊ぶのだ。
「おーろーせー！こっちは早く荘園戻ってエマとかエミリーとかナワーブとか幸運児君とかと会いたいんだよ！折角終わったらみんなでお菓子作ろうって話してたのに____」
「……ほう、成る程」
「え、なになにリッパー。何で急に怒ってんの。怒りたいのはこっちなんだけどちょっと」
「Aさん」
謝必安の言葉を合図に、今まで風船に吊られて宙を泳いでいたAの身体が地面に降ろされた。突然流れが変わった事に対する驚愕か、彼女はヘマタイトの瞳をくるくると回して自分を見下ろすリッパーと謝必安の顔色を伺う。しかし二人は揃って顔を見合わせて意味ありげに微笑んだ後、地面に座り込んで逃げようともしないAに視線をやった。
「Aさん。エマさんやエミリーさんは兎も角、他の男の名前を出して『会いたい』とは頂けませんねえ」
「は、」
「リッパーさんの言う通りです。どうやらまだ、自分はあくまで私達二人のものだという自覚が足りないようで」
最初から無いよそんなもん、とAが反論する前に「まあ分からないと言うなら仕方ありませんね」と謝必安が愉しげに呟いた。彼の言葉に呼応するようにしてリッパーが頷き、Aの身体を抱え上げる。一瞬後彼女が放り出されたのは、小さな舞台と何脚もの椅子が用意された薄暗いテントの中のカーペットの上だった。
「もう少し分かりやすい方法で教えて差し上げる、という事で」
「ええ、残念ですが今日のお菓子作りは諦めてもらうしかありませんね」
交互に浴びせられる謝必安とリッパーの囁きが鼓膜を揺らす。暴れるペットを宥める様にしてするりと頬を撫でた冷たい指先はどちらのものだったか。心中で思い付く限りの悪態を吐いて目を閉じたAには、知る由も無かった。
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聴(プロフ) - 十弧さん» いえいえ！お返事ありがとうございます！相変わらず綺麗な文章でとても羨ましい....！ゆっくり十弧さんのペースで体調に気をつけつつ更新頑張ってください！ (2019年8月17日 22時) (
レス) id: c7868a9ed4 (このIDを非表示/違反報告)
十弧(プロフ) - 聴さん» お久しぶりです…！最近うらつくに出入りする間隔も長くなってきていて、中々お返事出来ずに申し訳御座いません。第五人格良いですよね〜！私も大好きで書いていて楽しいので、そう仰って頂けて嬉しいです！これからも少しずつではありますが書いていきたいと思います！ (2019年8月13日 13時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
聴(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えておいででしょうか。リトの親です。最近第五人格を始めたので十弧さんの第五人格が読めてハッピーです！ありがとうございます！ (2019年8月9日 19時) (レス) id: c7868a9ed4 (このIDを非表示/違反報告)
十弧(プロフ) - ナ子。さん» コメント並びに応援のお言葉、有難う御座います。自分で言うのもなんですが、キャラだとおジョゼが一番特徴的かもしれませんね(笑)更新は遅めですがこれからも楽しんで頂けるよう精進して参りますので、何卒宜しくお願い致します！ (2019年4月21日 9時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ナ子。(プロフ) - 少し前から読ませていただきました・・・とてもキャラが立つ文章のため面白く読ませてもらってます。応援してます！ (2019年4月21日 9時) (レス) id: 848e96a0c3 (このIDを非表示/違反報告)
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