蚊帳を張る話 (ページ10)

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○信じてくれる人ページ10

１週間。

１週間、涼太がいなかった。

先生には、もう涼太に近づくなって言われた。
なんでだよ。意味わかんねぇ。

クラスのやつらは、まるで腫れ物に触るみたいに俺に接してきた。
あの場には、あいつらと俺らと先生以外だれもいなかったけど、噂なんかすぐに広がる。
俺が何をされたか、なんで声がでなくなったか、もうみんな知っていた。

唯一の救いは、うちの母親。ママだけは大人の中で唯一、涼太の事を信じてくれていた。

渡母「ねぇ、あんた明日、涼太くんちに行くのー？」

渡「(いくよ)」

渡母「んじゃお菓子作っとくから、持っていきなさいよ！」

渡「(はーい)」

涼太を信じて、涼太に感謝し、俺が涼太に会いに行くことを全肯定してくれた。
俺を、信じて、くれた。

渡「(ママ)」

渡「(ありがと)」

エプロンを引っ張って、でない声で伝えた言葉に。母親は、最大限の笑顔でもって、かえしてくれた。

.

翌日。

道を挟んだ向かいの涼太の家に行ったら、涼太の母ちゃんが大歓迎してくれた。

宮母「声でなくなったってマジだったんだなー。アタシ翔太の声好きだったからさー、はやく戻ってくるといいな」

渡「(ありがと)」

宮母「なにこれ、お菓子？うわ！手作りじゃーん！翔太ママのお菓子うまいからすきー！ありがとね！」

渡「(つたえとく)」

宮母「涼太上にいるから、行ってやって！アタシ買い物行ってくっから！」

渡「(はーい)」

慣れた階段をのぼり、涼太の部屋がある２階へ。

ノックすると、ゆっくりとドアが開いた。

渡「(よっ)」

宮「翔太…」

かすれた空気の音しか聞こえない俺の声に、涼太は一瞬すごく悲しい顔をして…でも、部屋へ入れてくれた。