蚊帳を張る話 (ページ5)

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○謎の気持ちページ5

俺の名前を呼ぶ声は、間違いなく涼太から発せられたもので。

その声は、記憶より低くて、なんというか…イケボで。
ああ、声変わりしたんだなぁ、とか関係ないこと考えていた。
ちなみに俺は声変わりまだです。

宮「あの…ありがとう…」

渡「……なにが」

宮「……かばってくれた？よね？」

渡「………別に」

宮「そういうとこ、変わんないよね」

渡「どういうとこだよ」

涼太はいっつも受け身だった。
つえぇ母ちゃんからなんか色々技を教えてもらってて、幼稚園の時点で涼太自身もすげぇ強いのに、ぜったい喧嘩でも手を出さなくて。
だから絡まれてたのをよく助けてたのを思い出した。

なんか急にこっぱずかしくなって…
手元にあったパックを開く。めっちゃ美味そうなビスケットサンド…

宮「翔太も…女の子が作ったものの方がいいでしょ。いいよ、それ持って帰るから」

渡「は？だれがんなこと言ったよ。俺はこれがいいの」

宮「……そっか」

ひとつ手にとって、口の中へ。
あ、レモンの味。てか

渡「うわ！」

宮「…口に合わない…でしょ？」

渡「うっっっっま！なにこれ！」

宮「え？」

渡「めちゃめちゃ美味いじゃん！わぁー、先輩方損したな！こんな美味いのに！」

涼太は一瞬嬉しそうな顔をしたけど…

とたんに、暗くなる表情。

渡「…どうした？」

宮「翔太…戻りなよ」

渡「は？」

宮「戻って、謝って、バスケ部戻りなよ。バスケ好きなんでしょ？」

渡「んーーまぁ…好きっつーか…楽しいけど」

宮「友達の誘いを断ってまで…部活行ってたじゃん。好きなんだよ。戻りなよ」

渡「…好きだけど。けど！涼太をあんな風にいうやつらはいやだ！」

宮「…ぇ？」

渡「バスケはどこでもできるっしょ！涼太のことを嫌な気持ちにさせるやつらとはしたくない。だから辞める！そんでいいだろ？」

宮「……翔太…！！」

ぎゅっと抱き締められる。
記憶より遥かに大きくなった身体が、俺を包んだ。

背中に腕を回すと、かすかに聞こえてくる嗚咽。
あーあーあーしゃーねぇなぁ。

.

阿「なにそれジャスティスが過ぎるじゃん」

渡「なにそのワード…」

阿「少女漫画の世界じゃん」

渡「少女漫画読まないから知らねぇよ」

阿「てかだてさん可愛いね。今からは想像もつかないよ」

渡「あの頃はな。なんでこんなことになっちまったんだ…」