蚊帳を張る話 (ページ17)

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番外編とある朝の出来事(渡辺side) ページ17

(渡辺side)

渡「………ん……」

目を開けると、開けられたカーテンから漏れ出る日射しと、朝御飯のにおいと、包丁がまな板を叩く音。

身体を起こして、下に散らばったパンツとシャツを着て。

寝室を出れば、朝食を作る恋人の後ろ姿。

渡「………はよ」

宮「あ、起きた。おせぇよ」

渡「今日休みなんだからいいだろ」

宮「まぁいいけど。ほら、座って。もうできる」

渡「ん、さんきゅ」

たてつくと朝食なしになるから、素直に座る。

この高校までは家から距離があるから、俺らは２人とも下宿を選んだ。
高校が提携しているアパート。ちょうど隣同士が空いたから、そこに。

涼太が角部屋で、俺がその隣。声とかきにしなくてもいいから、集まるときはもっぱら涼太の部屋、と２人で決めている。

まぁ俺が、俺の部屋を荒らしたくないってのもでかいけど。

宮「はい、どうぞ」

渡「いただきます」

宮「ん、召し上がれ」

ずずっ…とスープをすする。
うん、安定的にうまい。

宮「…味、どう？」

渡「ん？まあまあ」

宮「そっか、よかった」

…素直に言えないのを、これが精一杯ってのを、涼太はわかってくれてるから。
俺の返事に微笑んで、また料理に目を落とす。

宮「今日なにする？」

渡「あーーーー…」

宮「どっか行きたいとことかある？」

渡「別に…涼太は？」

宮「俺もないかな…」

渡「じゃあ家にいようぜ」

宮「うん、いいね」

最低限の会話。
これで、俺たちは通じ合える。

そとは物凄く天気が良さそうだけど。

べつに、俺らはここでいい。

今日はこの、8畳の部屋で。

シングルの狭いベッドの上で。

ゆっくり、２人の時間をすごそう。