蚊帳を張る話

●知った気持ち ページ11

１週間自宅謹慎をしていて。
日曜日、翔太がきた。

部屋に入ってきた翔太は、目に見える傷はほとんど薄くなっていたけど。
声が、でなくて。
目に見えない方の傷は、やっぱりまだ癒えていなくて。

その傷をつけた原因は、俺で。




なんでそんな俺に近づいてきてくれるんだろう。

俺と仲良くしなければ、こんな目に遭う必要もなかったのに。

あんな…ひどい…





宮「…っ！」





頬に触れる、手。

その親指が、俺の頬を、なぞる。





渡「(な ん で な く の)」





ああ、俺は泣いていたのか。

俺が泣いてどうするんだ、泣きたいのは翔太じゃないのか。





宮「俺の…せいで…翔太…っ…こえ…」





歌を歌うのが好きだって言ってた

カラオケで聞く声が、好きだった

友達とバカ笑いしているときの声が、好きだった





.






『『 涼太 』』






.






俺の名前を呼ぶ声が、好きだった







宮「翔太のこえ…ｸﾞｽｯ…戻らなかったら…ど…しよ…ッ……」







自宅謹慎なんてかまわない。退学だって怖くない。

翔太の声が戻らないことに比べたら。






渡「……」






背中に回された腕

頬に触れるふわふわの髪の毛


ぎゅっと、抱き締められる。





宮「……翔太……」

渡「…(お れ は)」





渡「(お れ は あ の と き、)」

渡「(あ ん な す が た を み ら れ て)」

渡「(涼 太 に 嫌 わ れ る 事 の 方 が こ わ か っ た)」




宮「…え？」





渡「(涼 太 に 嫌 わ れ た ら、生 き て い け ね ぇ も ん)」

宮「…それって？どーゆー…」





渡「…」

宮「…翔太？」





渡「(お れ、涼 太 の こ と が 好 き み た い だ わ)」

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