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赤ん坊が泣く声が聞こえる
その泣き声は、小さいけど力強い
俺はソファでうたた寝をしていたらしい
意識がはっきりしてくると、さっきの泣き声はより大きく聞こえた
どこから聞こえてくるか見回すと、窓際に立つ女
赤ん坊を抱いてあやしている姿はまるで聖母のようだ
俺が生涯、守っていくと誓った女
A
「あんまり大きい声で泣くから、パパが起きちゃったよ」
パパ、と呼ばれ、俺のことか…とようやく頭が働き始めた
一虎
「悪りぃ、寝てた…
泣き止まねぇの？
疲れるだろ、替わる」
A
「一虎こそ、疲れてるでしょ
私は大丈夫だから
パパ、お仕事で疲れてるんだって
ゆっくりさせてあげようね」
そう、戸籍上は俺の子だ
でも、俺と血の繋がりはない
東卍から出たAは、無事に女の子を出産した
まだ生後3ヶ月の小さな命は、千冬が生きた証
千冬が自らの命をかけて守った娘だ
Aは娘に向かって、俺のことをパパだという
実際、血の繋がりなんて関係ないくらい、娘が可愛い
だからいずれ、娘が大きくなったら少しずつ、話すつもりだ
お前の実の父親は最高にカッコいい奴だったよ、と…
俺も負けないくらい、いい父親になるからな…
一虎
「いいよ、替わる
っつーか、俺にも抱っこさせろ」
A
「はい、じゃぁ、パパのとこに行ってらっしゃい」
Aに代わって娘を抱っこする
毎日のことなのに、昨日よりも大きくなっている気がする
人の命を奪った俺が言うのもなんだけど…
命の重みを感じる毎日だ
一虎
「あ、今日はまだ千冬と場地に挨拶してねぇだろ
1日1回はちゃんと挨拶して顔見せねぇとな」
リビングに飾ってある千冬と場地の写真
1日1回は、必ず娘と2人を対面させるって、Aと決めた
A
「千冬パパと、圭介お兄ちゃんに、こんにちは、だね
今日もこの子はとっても元気です
ちゃんと、見守っててね」
Aの心の傷はそう簡単に癒えないだろう…
千冬の存在を忘れることもできないと思う
それでも、守らなければならない命がある
辛くても前を向いて、俺と生きていくことを決めてくれた
だから、俺もそれにちゃんと応えよう
2人を守った千冬のように
俺も、2人を必ず守っていく
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あの未来編、ご愛読ありがとうございます
この３人の、この世界線はもっと書きたいことがたくさんあります
別のお話として、ここでは語られなかったお話を紡ぎたいと思います
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作者名：神奈月 | 作成日時：2022年12月5日 18時
