6 ページ6
それから、2日ほど、部屋に引きこもった
千冬が下した決断が悲しすぎて、到底受け入れられない
一緒に育てたいという、当たり前のことを望んでるだけ
東卍にいる限り、そんな当たり前なことすら、望んではいけないのか…
今日何度目になるかわからない、ドアがノックされた
そして、千冬が入ってきた
さっきまではノックだけで、部屋には入らなかったのに…
ベッドで横になっている私のそばに、腰掛ける千冬
千冬
「…俺、勝手なことばっかだな…
でも、何が1番大事で守りたいかって考えた時、答えが一つしかなかった
お前と、お腹の子が1番大事で守りてぇんだ」
A
「私は千冬といたい」
千冬
「…俺も、場地さんの仇取ったら東卍をでる
だから、先に行っててほしい
でも、一人で逃げるのは無理だから…
だから、一虎くんを頼ってくれ
…あまり時間がないんだ…」
嘘つき…
本気で東卍から出る気なんてないくせに…
あなたは、自分を犠牲にしても、私を守ろうとしてくれている
私のこと、心配してくれるのはわかるけど…
そばにいてほしいのは、あなただけなのに…
A
「ねぇ、もしも、の話していい?
もし東卍で出会わなかったら、どうなってたかな…」
そう聞くと、千冬は少し悩んでこう言った
千冬
「…今みたいにどっかのペットショップで、偶然出会ったりして…
Aがいて、こどもがいて…
あと、猫飼いてぇな…、黒猫がいい
都心から少し離れてても一軒家で…
一虎くんが、遊びに来てくれて
おれらの代わりに子供のめんどう見てくれたりして…
気が付いたら、鬱陶しいくらい頻繁に遊びに来たりすんだ…
…どう?」
A
「…うん、楽しそう…
…そんな、普通の生活、したい…」
千冬は答えてくれなかった
彼の心はもう決まっているんだ、と…
この先、一緒に歩いていく未来はないのだ、と…
千冬
「…一虎くんなら、お前たちのこと、幸せにできると思う」
もっと他に方法はないのか…
悩んでも考えても、わからない…
その日、彼の思いに応えるように、私は婚姻届を書いた
わたしたちを守りたいという千冬の思いに応えるために…
彼は、万が一の時は自らを犠牲にする覚悟もしているのだと…
悲しいけど、そう気付いてしまった
私が婚姻届を書いた後、千冬は証人欄に名前を書いた
『俺が生きた証を守ってほしい』
そう言う彼の瞳は、父親の眼差しをしていた
80人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神奈月 | 作成日時:2022年12月5日 18時