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冬真
「それでさっ、相手の胸ぐら掴んでやったら、そいつすぐ逃げてったんだぜ!
 ダセェだろ?
 逃げるなら、最初からケンカふっかけてくんなっての!」

一虎
「ははっ、そんなんばっかしてると、そのうちAに怒られるぞ」

冬真
「毎日怒られてるよ
 宿題しろーって」

A
「冬真ー?
 そうゆうことしちゃダメっていつも言ってるでしょ!」

冬真
「げっ…
 母さん、聞こえてたのかよ…」

トラくんと楽しそうに話しながら部屋に戻ってきた冬真

私に話していた内容が聞こえていたことがバレると、明らかにバツが悪そうな顔をした

一虎
「A、あんま怒るなよ
 男ならこんくらい日常茶飯事で…ー」

A
「トラくんは冬真に甘すぎるのよ
 冬真もお友達に掴みかかったり、叩いたりしちゃダメっていつも言って…ー」

千冬
「一虎くん、ちょっとAの手伝いしてもらっていいっすか?
 冬真、少し話しよう」

私の話を遮るように、千冬はそう言って冬真を子供部屋に連れて行った

冬真は今のところはパパに逆らうことはない

千冬が怒ったら怖いのもわかっているからだと思う

A
「ぁ、ちょっと千冬、冬真もっ…」

追いかけようとする私の肩をトラくんが軽く叩いた

一虎
「あぁいうのは、父親の役目だろ
 千冬に任せておけよ」

A
「でもっ…」

一虎
「千冬なりに、一生懸命、父親になろうとしてんだ
 あいつ、生まれた年に父親亡くしてるから、父親ってのがどんな存在かわかんねぇって言ってた
 でも、毎日少しずつ、父親ってどんな存在でいるべきか、わかってきてるみたいだし…
 今は男同士で話した方がいいって思ってんだよ」

A
「…なんか、トラくんも変わったね」

一虎
「そうか?」

A
「うん
 もしかして、一回子育てしたことある?」

一虎
「んなわけねぇだろ」

肩をすくめながら、トラくんは笑った

でもなんだか、トラくんの言うことは説得力がある

…冬真のこと、自分の子みたいに接してたからかな…?

A
「話し合いの間に、夕飯の支度するから手伝ってくれる?
 下準備はできるんだけど」

一虎
「おぅ
 何作んの?」

A
「ハンバーグとグラタン
 あと、ポテトサラダにコーンスープ…」

一虎
「冬真が好きなもんばっかだな」

A
「誕生日だからね」

一虎
「だな
 ホント、冬真は幸せだよ、お前らの子に生まれて」

トラくん、本当に表情が柔らかくなったなぁ

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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年12月5日 18時

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