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蜜月が続いた
自由がない生活から、少しずつ、外に出れるようになった
外に出る時は必ず千冬と一緒が条件
それでも、普通の恋人同士のようにいられた
東卍に来て、季節が一回りした頃だった
毎月くるはずのものがこない
少し胃がムカムカするときもある
もしかして、妊娠してるかも…
愛した人との子である喜び
反面、この先どうなるのかという不安
当初、千冬は喜んでくれた
それなのに…
数日間、彼はぼぉっと物思いにふける日が続いた
そして、私が知らないところで彼は思いもよらぬ行動に出ていた
千冬
「A…
これ、書いて…」
そう言って渡されたのは、婚姻届
千冬と籍を入れる、そう思った
けれど、記載されている内容に、言葉を失った
A
「…千冬…?
夫になる人の欄、羽宮一虎って…
どうして、私がこれに書く必要があるの…」
千冬
「A…
東卍から出るんだ
このままここにいたら、お前もお腹の子も、稀咲になにされるかわかんねぇ
わかるだろ
お前のこと、記憶媒体としか思ってない奴だ
だから…ーー」
A
「意味わかんない!
だからって一虎と、って…」
千冬
「お前1人で東卍から逃げるのは無理だ
東卍の外にも協力者が必要なんだ
警察にも協力の要請はしてある
その代わり、捜査協力してやってくれ
お前たちの身の安全は、一虎くんと警察がいるから大丈夫だ」
A
「…わかんない…
それじゃぁ、千冬はどうするの…
この子の父親は、千冬なのに…」
千冬
「…わかってる
でも、本当に、お前たちのこと守りたいんだ
ここにいたら、日影にいる生活をしなきゃならねぇ…
子供には、そんな思いさせたくねぇんだ…」
A
「…なら、一緒に、東卍から出よう…?」
千冬
「…すぐに一緒には無理だ
いろんなこと片付いたら、そんときは、な…」
A
「…なら、私1人で育てる
千冬のこと、待ってるから…」
千冬
「…いつになるかわかんねぇ
だから待つな
一虎くんならお前のこと、幸せにしてくれる
一虎くん、全部わかって、承知して、それでもお前のこと守るって言ってくれた
だから、心配することなんてねぇ」
A
「私は、千冬じゃなきゃだめ
千冬と一緒にいたい
千冬とこの子を育てたい
だから、絶対にそれに名前は書かない
そんな、偽装結婚みたいなこと、絶対に嫌」
そう吐き捨てて、私は部屋に閉じこもった
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年12月5日 18時