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Aが目を覚ましてからは慌しかった
いろんな人が見舞いに訪れた
体力が戻るまではゆっくり体を慣らしながらの入院生活
結局、なぜ目を覚まさなさかったのはか不明のまま…
けど、直人が言った
Aは眠っている間に記憶の整理をしているのではないか、と…
実際、俺と別れたあと、一時的に記憶を失ったA
まるで、パソコンの削除ボタンを押したかのように、綺麗さっぱり忘れていた
でも、その記憶の底にはちゃんと俺の存在が残っていた
申し訳ないが、記憶媒体と呼ばれた理由も納得できる…
退院の日
普段はバイクで移動することが多いけど、さすがに今日は車でAを迎えに行った
まだ完全に体力が戻っているわけではない
歩き方もゆっくりだし、支えてやらないと危なっかしい
世話になった看護師や医師にお礼を伝えて、病院を後にした
A
「ただいま…」
部屋に響くAの声
ペケは玄関でAの帰りを待っていたかのように、尻尾をゆらゆらさせていた
千冬
「おかえり…
やっと、帰って来れたな…」
A
「…うん…」
あの日、帰宅途中に行方をくらまして、約3ヶ月
ようやく、家にAが帰ってきた
千冬
「疲れたよな?
座ってろよ
横になっててもいいから」
A
「うん、ありがとう
でも、少しずつ動かないと、体力戻らないから…」
千冬
「んなの、あとでもいい
無理すんな
家のこともしばらくはやらなくていい
飯は適当に買ってきたりすっから」
ソファに座ったAは、退院した荷物を片付けている俺を静かに見ているようだった
千冬
「…なぁ、A…
結婚式は延期にしちまったけど…
籍は、先に入れねぇ…?
…松野Aに、なってほしい」
そう言うと、Aは大粒の涙を流し始めた
A
「…こんなに迷惑かけて…
結婚式も延期して…
それでも、私を選んでくれるの…?」
…なに言ってんだ、お前…
お前じゃなきゃ、ダメだ…
お前には、俺以外の選択肢があったと思う…
一虎くん、大寿くん…
ほかにもいるかもしれねぇ…
でも、俺はお前じゃなきゃだめなんだ…
千冬
「場地A…
この先も、一生、俺が守っていく
だから、この先の未来も、隣にいてほしい」
A
「千冬…
ありがとう…
この先の未来も、あなたのそばにいさせてください」
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年12月5日 18時