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sleeping beauty ページ32

真っ白な病室

Aを梵天から奪還して、1ヶ月

未だ、病院のベッドで目を覚さない

毎日病室にきて、見舞客用のソファに体を預けて、今日一日のことを報告するのが日課になっていた

刺された箇所は幸いにも急所は外れていた

1ヶ月でかなり傷も回復しているはず

目を覚さない原因は不明のままだ

千冬
「…なぁ…、A…
 いつまで寝てんだよ…
 お前が起きねぇから、結婚式、延期にした…
 籍も入られねぇだろ…」

ベッドの横にある椅子に腰掛けて、返事がないのに話しかける

ちゃんと、聞こえてっかな…

そんな時、病室のドアがノックされた

姿を現したのは、直人とタケミっちだ

武道
「千冬、大丈夫…、じゃねぇよな…」

いつかも、そんなこと言ってたな、タケミっち…

直人
「あれから1ヶ月…
 Aさんが目を覚さない原因は不明のまま…
 警察として、彼女を保護する必要があったのに…
 本当に申し訳ありません…」

千冬
「…もぅ、気にすんな、って何度も言ってるだろ
 2人がいなかったら、こうやってAを取り戻すなんてできなかったと思う…」

直人
「…Aさんを刺して現行犯逮捕された男がようやく口を割りました…
 『やらなければ、自分がやられる』
 狙われたのは、やはり松野くんだったようです
 今わかっているのは、そこまでですが…」

やっぱ、Aは俺を庇ったのか…

武道
「…これからずっと、警察の警護対象なんだよな…
 これじゃぁ、あの時の世界線と同じだ…
 千冬、俺…」

千冬
「…気にすんな、って言っただろ…
 タケミっちと直人がいなかったら…
 Aは、一虎くんと一緒になってたんだろ?
 …Aを失わずに済んだ…
 それだけで、俺は十分だ…」

そうだ…

眠ったままでも、今、俺の目の前にAがいる

どんな形でも…

それだけで、十分だ…

…でも、本当に、俺はそれで十分なのか…

武道
「千冬…
 俺が言うのも変だけど…
 絶対に、大丈夫だ!
 近いうちに、目ぇ覚ますと思う
 信じてやれよ」

お前がそう言うと、なんでかわかんねえけど、そうなる気がする

絶対大丈夫な気がする

もうずっとこのままかもしれねぇって、諦めそうな日もあった

でも、俺が諦めたらダメだよな…

ちゃんと信じて、待っててやらねぇと…

千冬
「…だな…
 …もうこのままかもしれねぇって思って、結婚式も延期しちまった…
 諦めそうになった…
 それじゃ、ダメだよな…
 サンキュ、相棒…」

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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年12月5日 18時

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