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季節が1つ過ぎた頃
当初は、一時的に彼の自宅マンションにいるはずだった
それが、日を追うごとに部屋に私物が増えていった
ただ、いくら誘拐同然で連れてこられたとはいえ、こんな高級マンションに、恋人でもないのに住み続けるのは気が引けた
仕事がお休みで、リビングのソファでくつろぐ千冬
ガラス張りの窓からは、キラキラと都内の夜景が広がっている
A
「あの、千冬…」
千冬
「ん?」
A
「…私、一時的にここに置いてもらってるけど…
…本当は、出て行った方がいいよね…
東卍から逃げるつもりないから、どこか他の…」
千冬
「お前、何言ってんの?」
普段よりワントーン低い声で、明らかに不機嫌そうに彼は言った
千冬
「ここから出てって、どうすんだよ」
A
「…それは…」
千冬
「幹部連中はお前がここにいるの知ってる
そもそもタケミっちが俺にお前を押し付けた
別にここから出てく必要ねぇだろ」
A
「そうゆう意味じゃなくて…」
千冬
「じゃぁ、どうゆう意味だよ」
A
「だからっ…、その…」
俯いたまま答えずにいると、千冬の影が足元にみえた
千冬
「…言わなきゃわかんねぇよ
で、どうゆう意味?」
A
「…だからっ…
私がここにいたら、千冬に恋人ができたとき、困るでしょ!
今だって…、私がここで厄介になってるから…」
はぁー、と千冬は深いため息をついた
千冬
「もう一回言うけど、お前、何言ってんの?」
そう言いながら、ぎゅっ、と抱きしめられた
A
「…千冬…」
男の人にしては、少し細い指が、私の顎をすくい上げる
これまで、何度も重ねてきた唇
あの日から、私は自分の全てを彼に許してきた
いつの間にか、離れたくないという思いが強くなって…
それでも、言葉にしてくれたことがないから不安になって…
この生活と関係を、いつまでも曖昧にしてほしくなかった
気がつくと、座り心地のいいソファを背にしていた
千冬
「場地A…
不自由な生活させてんの、悪いとは思ってる
でも俺自身が、お前を手放したくない
だから、ここにいろ
他の幹部連中からも、稀咲からも、俺が守るから
そばにいてほしいのは、お前だけ」
A
「…じゃぁ、離さないで…
そばにいてくれる?」
千冬
「あぁ、当たり前だ」
自由のない生活
そんな中でも、人並みの幸せというか、恋愛というか…
これはこれで、幸せだったんだと思う
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年12月5日 18時